(27日、第107回全国高校野球選手権岡山大会決勝 おかやま山陽4―5岡山学芸館)

 1点を追う六回裏1死二、三塁、岡山学芸館の佐藤滉起捕手(3年)に打順が回ってきた。先発のエース青中陽希投手(3年)は五回におかやま山陽打線に捕まり、3失点して途中降板した。「四球でもいい場面でストライクを要求し、打たれてしまった」。失点は捕手としてリードしていた配球ミスという意識があった。「何としても取り返したい」

 2ボール2ストライクからの5球目。外角寄りの直球を振り抜くと、右中間に鋭い打球が飛んだ。長打になると確信して三塁まで懸命に走った。二塁、三塁走者は生還し、逆転した。

 野球への取り組みの転機となったのは、昨年秋の中国大会の準決勝での敗戦だ。広島商との対戦は自らのパスボールが失点につながり、選抜大会への出場が絶望的になった。「チームに迷惑をかけた。責任や自覚の意識を変えるきっかけになった」と振り返る。

 逆転後は捕手として2番手投手をリードし、切れ目のないおかやま山陽打線の反撃を1点に抑えた。九回表、最後の打者を打ち取ると、マウンドに走り寄って喜びを爆発させた。ベンチから歓喜の輪に加わった青中投手とも分かち合った。

 青中投手は「これまで監督から配球面で厳しい指導を受け、一緒に苦労を味わってきた。自分を支えてくれた相棒で、よく打ってくれた」と感謝。佐藤捕手は「お互いを補い合い、チーム一丸となって戦えた。甲子園でも続けていきたいです」と白い歯をみせた。(上山崎雅泰)