真夏の札幌で、幼い3人の子どもたちが約6時間半の間自宅マンションに置き去りにされ、熱中症の疑いで病院に搬送されたことで、両親が保護責任者遺棄罪の容疑で逮捕されたという報道(HBC北海道放送、7月17日)がありました。

HBCの続報(7月18日)によれば、両親は子どもを置き去りにしてパチンコと焼肉に行っていた可能性があり、約6時間半にわたり、小学校低学年の長男、4歳の長女、1歳の次女を自宅マンションに置き去りにした疑いが持たれているようです。

また、このときの自宅マンションの室温は30度近く、3人は熱中症の疑いで病院に運ばれています。

親が子どもを家に残して外出し、保護責任者遺棄罪で逮捕されるということは、子育て世代の親にとって他人事ではないようにも思われます。

どのような場合に、法的な問題となるのでしょうか。本間久雄弁護士に聞きました。

●保護責任者遺棄罪とは?

保護責任者遺棄罪について、刑法218条は、「老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の拘禁刑に処する。」と規定しています。

本件で問題となり得る「幼年者」ですが、年齢だけではなく、具体的事実関係に基づく扶助の必要性との関係で相対的に判断されます。

たとえば、東京地裁昭和63年10月26日判決(判タ690号245ページ)は、14歳から2歳までの実子4人をマンションに置き去りにし、うち1人を栄養失調症にさせた母親について、保護責任者遺棄、同致傷罪の成立を認めています。

「保護する責任のある者」とは、法令・契約・慣習・条理等によって法的に保護する義務が発生している者をいいます。

民法820条は、「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」とあることから、子どもの親は、子どもを「保護する責任のある者」と言えます。

「遺棄」とは、場所的離隔を伴うことにより、要扶助者に生命もしくは身体の危険を生ぜしめる行為のことをいいます。

そのため、子どもを自宅に残して外出する行為が保護責任者遺棄罪に該当するか否かは、子どもに生命もしくは身体の危険が発生しているか否かにかかっています。

たとえば、一人で食事はおろか水分をとることすらできない乳児を放置して出かける、真夏にエアコンの付け方の分からない幼児を残して出かけるなどの行為が該当するでしょう。