不動産業界を22年にわたって取材してきた吉松こころ氏は、近年大阪が“大化け”していると強調する。その内実とは?

◆◆◆

民泊で稼ぐための不動産購入

「民泊事業のメリットは、利回りが良いことと、事業にしてビザの申請ができることです」

 こう話すのは、香港の大手不動産会社、中原地産で海外不動産を担当する人物だ。社員は6000人、店舗は香港全域に400店あるという。


吉松こころ氏(本人提供)

「今、一番熱いのは大阪の民泊案件です。万博もあるし、大陸の中国人の旅行先として大人気。予算はマンション1戸なら5000万円から7000万円、戸建てなら7000万円から1億円くらい。香港人は1棟で買うより、区分所有で1戸単位の物件を複数持つ方を好みます。その方がリスクが分散されますから」

 最近も彼は、上海の投資家が大阪市内のマンションを十数戸まとめ買いするという案件に関わったという。

 彼らが民泊をやるメリットの一つとして挙げたのが「利回りの良さ」だ。

 今回、香港で会ったほぼ全員が、「日本で民泊用不動産を買う目安となる利回りは10%」と言っていた。

 例えば7000万円で買った戸建てで、10%の利回りを出すには、年間で約700万円の売り上げが必要となる。月にすればざっと58万円だ。1泊3万円で貸し出せば、20日稼働で60万円となり、無理のない数字といえる。

 しかし、民泊を経営するには許認可や申請が必要だ。「民泊新法」「旅館業法」「国家戦略特区法による特例民泊」のいずれかに適合しなければならない。それぞれに、営業日数や消防設備の完備、フロントの設置など要件が細かく定められているが、その辺りの対応はどうしているのかと尋ねると、「日本人に外注しています」と即答で返された。

 ちなみに、彼が「一番熱い」と語った大阪市は、2016年から本格運用された「国家戦略特区」に指定されている。民泊経営に関わる規制が緩和されている特区では、例えば通常180日とされる営業日数の上限はなく、通年営業が可能だ。彼らはそんな事情も知り尽くしていた。