今のお笑い界では空前の「賞レースブーム」が訪れている。「M-1グランプリ」「R-1グランプリ」「キングオブコント」といった歴史のある大会に加えて、「THE W」「THE SECOND」など新たな賞レースが次々と生まれている。
賞レースという形式は、大勢の芸人の中から才能のある人材を発掘するための仕組みとして優れている。そこで活躍したり、優勝などの結果を残したりした人は、それがきっかけで注目されて仕事が増えたりする。しかも、その選考の過程自体を1つの番組、1つのイベントとして多くの人に楽しんでもらうこともできる。それだけの意義があるからこそ、すでに多くの賞レースが乱立している今も、新たな大会がどんどん生まれているのだろう。
そんな中でも、7月21日に初めて開催された「ダブルインパクト 漫才&コント二刀流No.1決定戦」は、漫才とコントの両方で競い合うという点で画期的なものだった。
■お笑いのハイスペック人材を発掘
漫才とコントは似て非なるものであり、ほとんどの芸人はどちらか一方を専門にしている。両方の分野で完成度の高いネタを作れる芸人は真の実力者だと言える。「ダブルインパクト」は、そんなお笑い界の「超ハイスペック人材」を発掘するための新機軸のお笑いコンテストだった。
ただ、このコンセプトの革新性が、一般の視聴者にどこまで伝わったかは定かではない。そもそも「漫才とコントを両方やるのは難しい」という感覚自体が、多くの人にとってはあまりピンと来ないことかもしれない。
また、そもそも漫才とコントの境界線は曖昧であり、違いがよくわからないという人も少なくない。漫才の中には、途中でコント的な設定に入る「漫才コント(コント漫才)」というものも存在している。そういうネタが存在する以上、これは漫才なのか、コントなのか、と迷ってしまうのも無理はない。漫才とコントを両方やるというコンセプトがいかに画期的であるのか、というのは一部のお笑い好きにしか理解できないことかもしれない。
ただ、漫才やコントを見て楽しむだけなら、そんな小難しいことを考える必要はない。生放送された「ダブルインパクト」の決勝では、予選を勝ち抜いた7組の芸人が漫才とコントを次々に披露していた。視聴者は純粋にそれらのネタを楽しめばいいだけだった。