Photo: ヤマダユウス型

幅広いアクションカメラを展開している、深圳嵐ビジョン株式会社のカメラブランド・Insta360。

直近では2025年4月に、最新フラッグシップモデルとなる「Insta360 X5」を発売しました。ギズモードではこのカメラを使って自転車撮影をしたこともあったり。

高画質なフラッグシップから親指サイズの小型カメラ、さらにスマホ向けジンバルなど。近年のInsta360は、ライバルの多い360度カメラ界隈のなかでもひと際存在感を強めていますね。

そんな同ブランドのFounderをつとめるのが、劉靖康(JK Liu、Liu Jingkang)氏。同氏が来日したタイミングで、ブランドビジョンや技術的なアプローチについて、インタビューを行いました。

魔法のきっかけは自分の娘?

Image: Insta360

─同社のサイトには「あらゆる瞬間に魔法を起こすお手伝いをします。」と記載があります。2015年の立ち上げは魔法の始まりだったと思いますが、この魔法を思いついた経緯、あるいはご自身の中でのきっかけは?

JK Liu氏:人々にとって「映像を記録する」というニーズはベーシックなものなので、それが映像分野に参入したきっかけになります。「魔法」という表現は、系統的な方法論や、技術やイノベーションを提供するという思いの表れです。世の中には様々なカメラが存在するものの、人々のニーズはまだ満たされていないと考えています。そこにイノベーションを提供できれば、と。

また、私には4歳になる娘がいるのですが、開発チームには「子どもの素敵な瞬間を記録したい」という要望を強くプッシュしています。私自身のきっかけとしては、娘の可愛い瞬間を記録したいという思いとなりますね。子どもの成長はとても早いですし、面白い・かわいいと思った瞬間にカメラを構えてはもう遅い。そういった瞬間を撮れるような技術の開発を行っています。

「Insa360 X5」は、撮影ボタンを押す60秒前の映像を保存できる「プリ録画」機能を搭載。シャッターボタンを押す前の映像すら記録できる。

─サイトでは撮影シーンのカテゴリーが旅行のほか、モーターサイクルやウォータースポーツ、サイクリング、ウィンタースポーツに分かれていますが、たとえば登山やランニングがない理由があれば教えてください。また登山、トレイルランニング、ランニングにおすすめの製品も教えてください。

JK Liu氏:サイトで確認できるジャンルはあくまで一例ではあるのですが、実際に登山やハイキングなどでは「Insta360 GO 3S」を使ってくれている人が多い印象です。

製品左から「Insta360 Ace Pro 2」、「Insa360 X5」、「Insa360 GO 3S」、「Insa360 Flow 2」。

JK Liu氏:ただ、まだ完璧ではないと考えています。例えば日本ではサッカー、中国ではバスケが主流なスポーツですが、弊社としてもあらゆるアクティビティで完璧に使えるような製品を研究しています。あるいは自分や家族を撮影できるVlogのようなカメラについても研究しています。

─登山の動画などでは、自撮り棒に繋いだ「Insa360 X5」をバックパックに挿して撮影しているようなものもありますね。

JK Liu氏:そうした動画は、我々も楽しく拝見しています(笑)。

スマホで編集できれば、ユーザーも増える

─360度カメラは、撮影後の動画編集が難しそうな印象があります。近年は専用のスマホアプリで直感的な編集が可能となりましたが、Insta360としてはデスクトップよりもスマホでの編集を主眼に考え得ているのでしょうか?

JK Liu氏:弊社の戦略としては、アプリを主軸と考えています。その理由は、より多くのユーザーや初心者にも使ってもらえるようにするためです。デスクトップでの編集(専用の編集ソフト「Insta360 Studio」を利用)については、よりプロの方に向けたものとなっています。

─アプリが簡単に使えるようになれば、より多くの人にInsta360の製品を使ってもらえる、すなわちユーザーが増える、という流れがあるのでしょうか?

皆さんお待ちかね!?
360度カメラX5の使い方と、4/22にアップデートされたアプリ編集のチュートリアルをご紹介 !

YouTubeにて細かく説明しております
前半:X5の基本操作
後半:アプリ編集

さらに不明点はコメントでお知らせください✨https://t.co/pKfcYzjJZ1

— Insta360 Japan (@Insta360Japan) May 25, 2025

JK Liu氏:その通りです。アプリ開発はユーザー拡大のためでもありますが、撮影をより身近に感じてもらうためでもあります。アプリを使えばいつでもデータの確認や編集ができる。誰もがPCで映像を確認できるわけではありませんから、スマホから写真を振り返るのと同じような感覚で、弊社の映像を確認・再生できるようにと考えています。

─センサーサイズ、アルゴリズムの最適化、バッテリー時間、放熱性能、耐久性など、アクションカメラに求められる要件は一般的なカメラよりも厳しいものです。Insta360は、開発研究においてどのような点を重要視していますか?

JK Liu氏:アクションカメラでは、特に耐久性と放熱性が重要視されます。弊社はこの分野に関しては様々な対策を講じています。もちろんセンサーサイズやソフトウェアの改修も重要ですが、これらの改修も放熱性などに繋がってきます。

幼少の頃からコンピューターやプログラミングが好きだったJK Liu氏は、南京大学ソフトウェア学院を卒業している。

JK Liu氏:もっとも重要なのは、消費電力です。消費電力が小さければ、バッテリーやカメラのサイズも小さくできます。消費電力においてはチップとソフトウェアアルゴリズムの2点がとても重要で、弊社はアルゴリズムに強いと自負しています。

5.7Kや8Kといった高解像の映像ではセンサーサイズが重要ですが、チップに関しては弊社は専門技術を持っていません。しかし、チップについても弊社でトライしています。「Insta360 X5」は「Insta360 X4」とほとんど同じですが、「Insta360 X5」は解像度もバッテリー時間も向上しています。

─最後に、Insta360のさらなるスケールアップを目指した戦略について、お話しできる範囲で教えてください。新製品のみならず、新しい取り組みなどもありましたらお願いします。

JK Liu氏:現在、弊社のエンジニアのうち半数が新製品の開発に携わっています。多くの情報は伝えられませんが、すぐ近い時期に新しい製品をご紹介できるのでご期待ください。

Source: Insta360公式サイト