◆大相撲 ▽名古屋場所10日目(22日、IGアリーナ)

 西前頭4枚目・玉鷲が新横綱・大の里を突き落とし、昭和以降新入幕で最年長となる40歳8か月での金星を獲得した。旭天鵬に並ぶ最年長勝ち越しも決め、単独首位の一山本と1差の2敗を守った。大の里は今場所3個目の金星配給。昭和以降の新横綱で最多に並ぶ不名誉で、今年春場所の豊昇龍以来5人目となった。優勝争いは一山本を2敗の玉鷲、関脇・霧島、平幕の安青錦、草野ら6人が追う。

 すごい瞬間を見させてもらった。もう2度と見られないかもしれない。40歳の力士が結びの土俵に立って横綱と対戦。金星を挙げて座布団が舞う。玉鷲の快挙に心の震えが止まらない。

 立ち合いで玉鷲は少し左に動いた。左脇を固めて大の里の生命線である右差しを許さなかった。大の里は苦し紛れの左差しで強引に前に出るしかなかった。そこを突き落とされた。なぜ吹き飛ばす立ち合いを選択しなかったのか。なぜ強引に体を預けてしまったのか。疑問は残るが、玉鷲の快挙に拍手を送りたい。

 仕切りを見ていたら大の里より分厚い体に見えた。30歳を過ぎた力士は尻の筋肉から落ちていくものだが、玉鷲の尻の筋肉はパンパンに張っている。一門の連合稽古では若い力士と同じ時間から準備運動で汗をかき番数をこなす。積み重ねてきた努力が歴史的な快挙を呼んだといえる。(元大関・琴風、スポーツ報知評論家)