16年ぶりに復活した日産自動車野球部が、17日の都市対抗予選で躍動した。本戦出場こそ逃したものの、強豪の東芝相手に善戦。母体の経営は危機にひんし、活動拠点である追浜工場(神奈川県横須賀市)の車両生産の打ち切りが2日前に発表されたばかり。ナインの快進撃が、応援に駆けつけた社員らを勇気づけた。
本社財務部の佐藤敬子さん(54)は「選手にありがとうと伝えたい」と健闘をたたえた。追浜工場の九州統合が決まり、チームの存続は見通せない。「絶対に続けてほしい。役員こそ選手の奮闘を見て」
ユニホームの右胸に伝統のセダンにあやかった「ブルーバード」と、2度の都市対抗優勝を表す二つの赤星が輝いた。1998年の優勝メンバー大西弘仁さん(53)は「社員の結束力を高めてくれた」と後輩をねぎらう。
電動化や自動運転で「100年に1度の変革期」に直面する自動車業界。「技術の日産」ともてはやされた往時の面影はない。横浜工場人事部の渡部浩子さん(56)は、その苦境を「名門」と呼ばれながら2009年に休部したチームの浮沈に重ねる。「選手と一緒にがんばりたい」と前を向いた。
追浜工場製造部組立課の菊田慎治さん(52)は「職場はかつてないほど重苦しい雰囲気だった」と明かす。ひたむきに白球を追うナインに励まされたといい、「野球部は存続すると信じている」とエールを送った。