北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の妹、金与正(ヨジョン)党副部長は28日、韓国の李在明(イ・ジェミョン)政権が北朝鮮との対話を求めていることについて「どんな政策や提案にも興味はなく、韓国と向き合うことも、議論する問題もないという公式の立場を改めて明確にする」と強調し、全面的に拒絶した。

 朝鮮中央通信が28日、与正氏の談話を伝えた。6月の李政権発足後、北朝鮮が韓国との関係について自らの立場を表明するのは初めて。

 李政権は、保守系の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前政権で悪化した北朝鮮との関係の改善を訴え、就任直後に北朝鮮向けの宣伝放送を中止するなど、金政権に秋波を送り続けている。だが、与正氏はこれを「評価されることではない」と切り捨てた。

 それでも、李大統領は28日の会議で「平和的な雰囲気の中で韓国と北韓(北朝鮮)の信頼の回復が重要だ」と述べ、引き続き北朝鮮側に対話を呼びかける考えを示した。

 与正氏は李政権について「韓米同盟に対する妄信と、(北朝鮮との)対決構図は前任者と少しも変わらない」と指摘し、8月に予定される米韓合同軍事演習を強く批判した。

 韓国で南北関係を統括する鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一相は28日、記者団から訓練の縮小などを李氏に提案するかを問われると「そうするつもりだ」と述べた。

 また、与正氏は28日の談話で「李政府がいくら同族のまねをして、正義を尽くすかのように騒ぎ立てても、韓国を敵とする我々の国家の認識に変化はあり得ない。朝韓関係の性格を根本的に変えた歴史の時計の秒針を逆戻りさせることはできない」と述べた。

 正恩氏は2023年12月、南北を「敵対的な2国家関係」と位置付け、平和的な統一を目指す従来の方針から転換している。【ソウル福岡静哉】