LRT再評価の連鎖反応
宇都宮ライトレール(LRT)の成功は象徴的な事例となり、岐阜や京都をはじめとする地方都市で、かつて撤退や見送りとなっていたLRT導入構想が相次いで再浮上している。
高齢化、車依存、バス路線の限界といった構造的課題が臨界点に達するなか、都市の再設計を迫られる地方自治体にとって、LRTは交通手段ではなく、持続可能なまちづくりの切り札として再び注目されている。
本稿では、宇都宮市でのLRT新設を契機として再び注目される全国的なLRT再評価の流れに着目し、その実現可能性と課題をあらためて読み解く。
500万人突破が示す地方LRTの底力
2023年8月、全国で初めての全線新設型LRTとして、宇都宮ライトレールが開業した。初年度から利用者数は当初の予測を上回るペースで推移し、2024年9月には想定より3か月以上早く累計500万人を突破した。とくに土日・祝日の利用は想定の3倍に達しており、観光やレジャー目的での利用が際立っている。
この成功は、大都市圏ではない自治体にとって、LRTがもはや「夢物語」ではなく
「現実的な選択肢」
であることを明示した。構想の始動から数十年、行政と地域住民による合意形成の積み重ねが、ようやく具体的な成果として結実した事例である。他の地方都市がLRT導入構想を再浮上させる契機にもなっている。
宇都宮LRTは、通勤通学の足としてだけでなく、中心市街地の賑わい創出や観光回遊性の向上、歩行空間の整備といった都市全体の再設計に資するインフラとして、多面的な機能を果たしている。つまり、LRTは交通手段ではなく、都市の構造と経済活動に波及効果をもたらす戦略的な投資でもある。その実績が、LRTという選択肢の実現可能性を裏付けている。

再浮上するLRT構想の波紋
宇都宮LRTの成功を受け、各地でLRT導入の構想が再び動き始めている。岐阜県では2025年7月、知事がLRT導入の検討を公表し、10年後の開業を目標に掲げた。また、京都市では、京都商工会議所の「京都経済人会議」において、2040年までの導入構想が示された。いずれも、かつては路面電車を廃止した歴史を持つ都市である。それにもかかわらず、いま再びLRTの必要性が浮き彫りになっている。