独創的な作品を世に送り続けているスタジオA24と、気鋭の映画監督アーロン・シンバーグがタッグを組んだスリラー『顔を捨てた男』(公開中)。隣人で劇作家を目指すイングリッド(レナーテ・レインスヴェ)に心を惹かれながらも、自分の気持ちを押し込めて生きるエドワード(セバスチャン・スタン)は、外見を劇的に変える治療を受け、念願の新しい顔を手に入れる。別人として順風満帆な人生を歩みだした矢先、目の前に現れたのは、かつての自分の“顔”にそっくりな男オズワルド(アダム・ピアソン)だった。その出会いによって、エドワードの運命が狂い始めていく…。

容姿が変わっていく主人公の複雑な心情を熱演したセバスチャン・スタン
容姿が変わっていく主人公の複雑な心情を熱演したセバスチャン・スタン / [c] 2023 FACES OFF RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

■「アダム・ピアソンがいかにすばらしい俳優であるかを人々に示したかったんです」

第74回ベルリン国際映画祭にて最優秀主演俳優賞(銀熊賞)、第82回ゴールデングローブ賞では最優秀主演男優賞(ミュージカル/コメディ)を受賞したほか、第57回シッチェス・カタロニア国際映画祭で最優秀脚本賞、第34回ゴッサム・フィルム・アワードで最優秀作品賞を受賞するなど数多くの映画賞に輝いたA24製作の野心的な作品を手掛けたのは、2018年の『Chained for Life』で注目されたシンバーグ監督。自身も口唇口蓋裂を治療した経験がある監督が、外見的な違いを持つ人々の内面や社会との関係性を深く掘り下げた意欲作について語った。『Chained for Life』で注目されて以来、5年ぶりの新作となった背景について、シンバーグ監督は率直に語る。