被爆80年に合わせ、長崎県諫早市の学習塾会長、久保元治さん(71)はフランスを自転車で旅しながら、来月8、9両日、パリ市内で反戦反核の願いをアピールする。昨年、自転車で欧州を旅した際、広島、長崎への原爆投下が知られていないことを痛感したのがきっかけ。「ロシアのウクライナ侵攻など核兵器の脅威が、地続きで存在する欧州だからこそ、被爆の実態を知ってほしい」
 中高生の頃から自転車を愛好し、高校時代はワンダーフォーゲル部で鍛えた。40歳から本格的に山に登り始め、毎朝、近くの山に登る日課も続けている。1981年から市内で学習塾を経営し、多くの生徒の学びを支えてきた。
 仲間らに触発され、欧州の自転車道路網「ユーロ・ヴェロ」を走り始めたのは2018年。新型コロナウイルス禍を挟み、昨年は88日間、諫早から抱えて行ったクロスバイクに乗り、ドイツなど5カ国、計1480キロを走破。旅で会った人の多くが日本に興味を持っている一方、訪れたのは東京や大阪、京都が大半で、二つの被爆地に行った人はいなかった。具体的な原爆被害を知る人も少なく、原爆投下に対する海外との認識差にショックを受けた。
 4回目となる今回は来月初めに渡欧。8、9両日、パリ市内で自作のプラカードを掲げ、長崎の被爆者を収めた写真(コピー)付きのチラシを配る。その後、9月末までフランス各地を自転車で巡る。
 白地に赤い日の丸入りのTシャツには、こう記した。「NO MORE ATOMIC BOMB NO MORE NAGASAKI(二度と核兵器を使わせず、長崎の悲劇を繰り返さない)」。核保有国でたった1人の挑戦が始まる。