【増田俊也 口述クロニクル】

 写真家・加納典明氏(第29回)

 作家・増田俊也氏による新連載スタート。各界レジェンドの生涯を聞きながら一代記を紡ぐ口述クロニクル。第1弾は写真家の加納典明氏です。

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増田「典明さんは1942年(昭和17年)生まれですからさすがに戦争の記憶はないですよね」

加納「いえいえ。憶えてますよ」

増田「3歳で?」

加納「憶えてる。B-29の音も」

増田「クリエイター特有の早熟ですね……」

加納「防空壕に入ると外からB-29のエンジン音が聞こえてくる。見たくてしょうがないんですよ。だからちょろちょろ防空壕を這い出て見てて、よく怒られました」

増田「かなり記憶が鮮明ですね。名古屋は大門生まれでしたよね。大門の辺りでの空襲ですか」

加納「いや。生まれたのは今のテレビ塔の近くなんです。中区錦3丁目の辺りですよ。いわゆる〝錦3(きんさん)〟ね。それで戦後に大門に移った。中村区の西米野町っていうところに。大門と太閤通3丁目のちょうど真ん中ぐらいの場所です」

増田「遊郭の跡があって」

加納「そうです。あの辺り。それで、小学校と中学校は地元の普通の公立で、高校行くときに、やっぱり親父の影響があって、デザイン科というか図案科みたいなのがある市工芸(名古屋市立工芸高校)を選んだんです」

増田「名古屋の芸術系高校の名門ですね。僕も名古屋生まれですから知っていますが、昔はかなり人気があって入学が難しかった」