入浴時に使用するシャンプーとリンス(コンディショナー)。同じブランドの商品をセットで使っている人も多いのではないでしょうか。しかし、髪を洗うときは必然的に目を閉じるため、シャンプーとリンスの判別が難しいこともありますよね。実は、目を閉じていても、それぞれのボトルが簡単に分かる方法があります。
「区別できるようにしてほしい」消費者の声を受け…
シャンプーボトルとリンスボトルを区別する方法は、とてもシンプル。シャンプーボトルには、側面やプッシュ部分にギザギザ状の「きざみ」がつけられています。そのため、目を閉じたままでもボトルに触れれば、「きざみ」の有無で識別できるようになっているのです。
シャンプーボトルの「きざみ」を初めて取り入れたのは、大手メーカーの「花王」。「シャンプーとリンスの容器が同じで紛らわしいため、目を閉じていても区別できるようにしてほしい」という消費者の声を受け、容器の開発に着手しました。
「きざみ」によって触覚で識別できることや、容器のデザインを損ねないことなどさまざまな試行錯誤を重ね、1991年10月にボトル側面に「きざみ」の入ったシャンプーが市場に初登場。さらに2年後には、ポンプ部分にも「きざみ」をつけ、ポンプの頭に触れるだけでも判別可能になりました。この画期的なアイデアは目を閉じて使用するときだけでなく、目の不自由な人にとっても有効です。
しかし、「きざみ」入りのシャンプーボトルが花王の商品だけだと、消費者が混乱してしまう可能性も。そこで、シャンプーボトルの「きざみ」を統一化するため、花王は業界全体に働きかけました。その結果、国内のほとんどのメーカーで、シャンプーボトルに「きざみ」が入るようになったのです。
さらに、ボディーソープの普及に伴い、ボディーソープボトルには「1本線のライン」を入れることでシャンプーやリンスとの識別が可能に。これらの「きざみ」や「ライン」は、JIS(日本産業規格)の事例として掲載されています。
日頃、何気なく使っているシャンプー。そのボトルに入った「きざみ」は、消費者に寄り添った企業努力によって生まれていたのですね。