Nazih Osseiran

[ダマスカス 7日 トムソン・ロイター財団] - シリアの医療体制が荒廃していることを映し出すような首都ダマスカスのアル・モジタヘド病院の薄暗い廊下で、消化器疾患を専門とするバシャール・ハマド医師は数十人の白衣姿の研修医を指導している。

薄暗い病院内では、重要な部品が欠落している血液治療用の機械が散らかる。病室には扉がなく、床は汚れて漏水で覆われたままだ。

まるで廃墟と化した病院は、アサド前大統領の独裁体制が残忍だったことを示す遺産となった。昨年12月に追放されたアサド氏は反体制派を容赦なく弾圧し、13年間にわたって内戦を繰り広げた。西側諸国の制裁を招き、経済は壊滅状態に追い込まれ、医療体制も崩壊寸前に陥った。

国連が5月に発表した評価によると、完全に機能している病院は全体の57%、一次医療機関のうち37%にそれぞれ過ぎない。また内戦中に50―70%の医療従事者が国外に流出したと指摘されている。

シリア生まれで現在は米国に住み、ダマスカスでボランティア活動をしているハマド氏は「彼ら(アサド体制)は医師も、看護師も、設備もない劣悪な医療システムを残して国を去った」と指摘。その上で「彼ら(現地の医師)は手にしているものを考えれば、素晴らしい仕事をしている。資源が足りない。それは患者にとって安全ではない」と語った。

ハマド氏はアル・モジタヘドでは麻酔を使えることはめったになく、使えたとしても専門医ではなく一般の医師が手がけていると説明する。