睡眠について独自に取り組む熊本県の公立高校が、「昼寝」に関する研究成果を発表しました。
そこに同席した世界的な睡眠学者が指摘したのは「睡眠不足の危険性」です。
昼下がりの会場で…
研究成果が発表されたのは、宇土中学校と宇土高校が開いた研究発表会です。
熊本城ホールに生徒が集まり、さっそく発表へ…と思いきや、会場の照明が落とされました。
生徒のアナウンス「いつものBGMで、間もなく『ウトウトタイム』が始まります」

「宇土」だけに「ウトウト」
席に座ったまま眠りにつく生徒たち…これは「午後も活発に動けるように10分の昼寝をする」という宇土中学・宇土高校独自の取り組みです。
宇土高校の3年生「(午後の)5時間目と6時間目は集中できる。全然違う」
宇土高校は、文部科学省が指定する「スーパーサイエンスハイスクール」の1つで、国際的な科学技術人材の育成に取り組んでいます。
今回はその取り組みの一つとして、5人の生徒が、普段の昼寝、午睡(ごすい)の適切な時間や有効性について研究成果を発表しました。

現行の「ウトウトタイム」は不十分?
5人の研究テーマは「昼寝を長くすると夜の睡眠に影響する?」
高校生4人の脳波を頭に巻いた装置で測定し、眠りにつくまでの時間や、昼寝が夜の睡眠に与える影響を調査することで、適切な昼寝の時間を調べました。
その結果は?

宇土高校の生徒「午睡は10分より多く、30分以内が適切だと考察しました。30分以上寝ると午睡の効果が逆効果となる可能性も考えられます」
入眠までの平均時間は約10分、眠り始めてから平均して約30分で自然と目が覚めることを発表しました。一方、30分以上眠ってしまうと深い睡眠から起こされることで、強い眠気や作業効率の低下といった睡眠慣性が起こりやすくなるということです。
この結果から「学校で実施されている10分の昼寝は、眠りに入るころに終わるため、時間を延ばすべき」と提案しました。

「従業員がよく眠る企業ほど利益率が高い」
発表会の後に登場したのは、睡眠と目覚めを調節する脳内の神経伝達物質「オレキシン」を発見した世界的な睡眠学者、筑波大学の柳沢正史教授です。「睡眠の研究」という繋がりから講演が実現しました。

柳沢教授は、生徒たちに「日本人がいかに睡眠不足で、睡眠がなぜ重要なのか」を伝えました。
睡眠学者 筑波大学 柳沢正史教授「睡眠不足だと、簡単に言うと『嫌な奴』になるんです」
柳沢教授は、睡眠不足によって感情のコントロールが難しくなり、イライラしやすくなることを研究データを交えて説明しました。「従業員がよく眠っている企業ほど利益率が高い」という研究結果もあるのです。

また、青少年の睡眠については「高校生でも8時間半は眠るべき」と指摘。「寝る間を惜しんで勉強してはいけない」と言います。
そして「早朝からの授業開始は非生産的である」とするアメリカの研究結果も紹介しました。
柳沢教授「熊本の高校が『朝課外(1時間目の前に実施される課外授業)』をやめて『夕課外』にしたのは素晴らしい。実質的に始業時間を遅らせるのと同じ」
自分の「理想の睡眠時間」は?
中高生のころから寝不足が当たり前で、それが大人になっても続くのが日本人。そのため柳沢教授は「たくさん寝た方が良い」と話します。
寝る前に光を浴びると睡眠と覚醒を整えるホルモン「メラトニン」を抑制するので、「明かりを完全に消して寝床につくように」と推奨しました。
では実際、どれぐらい眠れば良いのでしょうか?
柳沢教授によりますと、その調べ方は「4日間連続で夜に寝たいだけ寝る」こと。そして「4日目に眠った時間こそが、自分の理想の睡眠時間」だということです。
なかなか難しいかもしれませんが、これを知ると1日の過ごし方が変わるかもしれませんね。
