南アフリカ東部のダーバン郊外で18日閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、トランプ米政権の高関税措置に懸念の声が相次いだ。ただ、当事国であるベセント米財務長官は欠席。3会合ぶりに採択した共同声明は米国を名指しせず、議論は深まらなかった。「トランプ関税」が世界経済に影を落とす中、G20の枠組みが揺らいでる。

「関税措置は過度な不均衡の解消にとって適切な手段ではない」

加藤勝信財務相は初日の17日の会議でこう指摘し、トランプ関税がもたらす不確実性が経済や金融市場に与える影響に懸念を示した。他の参加国からも同様の声が多く寄せられ、2月と4月の会議では実現しなかった共同声明の採択に至った。

財務省同行筋によるとトランプ米大統領の就任から約半年が経過したことで米政権のスタンスが定まり、全会一致で決める共同声明の内容についてもこれまでより調整がしやすくなったという。

声明の冒頭では世界経済について、足元の不確実性の高まりや地政学と貿易の緊張、グローバルなサプライチェーン(供給網)の混乱などが「経済成長、および金融と物価の安定に影響を与える、複雑な課題に直面している」と指摘。「多国間協力を強化する」との文言も盛り込まれ、トランプ関税への懸念を意識させる内容となった。

ただ、声明には「米国」や「関税」といった具体的な表現は一切入っておらず、米国への配慮をうかがわせた。財務省同行筋は、共同声明で特定の国を名指しして非難することは基本的にないと指摘。一方で「何気ない一言一言の中に、色々なことが含まれている」とも述べ、多国間協調の難しさをにじませた。

こうした中で来年、議長国を務めるのは皮肉にも米国だ。ロイター通信によると、米国は会議の規模縮小も検討しているという。G20が多国間協調の舞台として信頼を保てるのか、正念場を迎えている。(根本和哉)