頻繁に痰の吸引をしなければならないなど、医療者によるケアと介護も必要な高齢者は、今後は、介護保険を使って介護医療院に入居することになる。介護医療院は、2018年に新設された比較的新しい介護施設で、医療の必要な要介護高齢者の長期療養・生活施設だ。

「日常的な医学管理」や「看取り・ターミナルケア」などの機能と、「生活施設」を兼ね備えている。病院や診療所から介護医療院に転換した場合には、もとの病院名のままでよいため、外見は何も変わっていないが、介護医療院へ転換しているところもある。

東京23区内には、まだ介護医療院は少ないが、今後このような施設が増えれば、医療依存度の高い要介護高齢者の居場所はある程度確保できるかもしれない。

ただし、入所するためには、要介護認定を受け、介護医療院で診なければならないほどの医学管理が必要だと認められなければならないし、居住費と食費、基本サービス費、雑費などで月十数万円以上の費用はかかることは覚悟しなければならない。

おおむね要介護度4以上の、寝たきりに近い人しか入れず、要介護度が軽いけれども医療が必要な人は、やはり行き場がない状態になっているのが実態だ。また、介護医療院の施設数や病床数には地域差があり、東京都内は、2024年4月時点で33施設・2823床しかないから、入りたくても入れない状況になることも考えられる。

私も病院の一部を介護医療院に転換することも検討したが、地価や人件費の高い東京では、介護医療院の採算がなかなか取れないので、転換は見送った。

病院は病人を治療する施設であり、すでに治療が必要ないかできない状態になっているのに、病院に入院させる社会的入院は、高齢者にとっても決して幸せなことではない。

社会的入院に関しては、私自身もなくすべきだと考えている。単に介護療養施設の廃止を批判しているわけではないので、そこは誤解しないでいただきたい。

確かに、東京都内や大阪などの都市部とその近郊で後期高齢者が増える2030年、2040年を考えれば、国民医療費や介護給付費は極力、減らした方がよいに決まっている。

介護医療院は病院ではなく介護施設なので、「早く退院してほしい」と転院を迫られることもない。リハビリをしてある程度もとの状態に戻れるのならともかく、医療依存度が高く、家族がいたとしてもほとんど寝たきりで自宅で介護できる状態ではないのに、病院を転々とするよりは、介護医療院で最期の時間を過ごせるほうがいいのではないだろうか。

ジェットコースターのような中小病院経営

ご多分にもれず、新京浜病院と京浜病院という2つの病院の経営にあたってきた私自身も、診療報酬の改定の度に右往左往し翻弄されてきた。

京浜病院はもともと急性期の一般病院で手術も多数実施しており、脳神経外科の関連病院での手術後のケアのために入院する患者も多く、1990年代前半頃まで常にベッドは満床だった。