本県の霊峰・月山の頂上小屋が、少雨により水不足となり、飲食や休憩所としての昼の営業を休止している。雨水を、ろ過など適正に処理し、炊事やトイレなどに使ってきたが、十分な水量がなく、雪解け水を運んで必要な水を確保している状況だ。夏山シーズンは約3カ月間と短く、書き入れ時に打撃を受けた。オーナーの芳賀竹志さん(79)は「天の恵みに期待するしかない」と頭を抱えている。

 今年で開設から80周年を迎えた頂上小屋は登山客に休憩や食事を提供し、宿泊できる場所として親しまれている。ただ今年は今月1日の開山直後からほとんど雨が降らず、雨水の貯水槽が底をつき日中の営業はままならなくなった。国土交通省月山ダム管理所(鶴岡市)によると、同市上名川にある月山ダム観測地点の7月の降水量は2020年から24年まで少なくても99ミリ、多い年は733ミリあったが、今年は25日現在でわずか3ミリとほぼない状態だ。

 「何カ月も前に予約してくれたお客さんを断ることはできない」と芳賀さん。小屋の従業員が数百メートル離れた雪渓から雪解け水を毎日運んでいる。ろ過など適正な処理をして、宿泊客分の飲み水や生活用を確保している。今後もしばらくまとまった降水は期待できず、「異常気象が普通になりつつある。これほど続くと経営の見通しが立たない」と、深刻な胸の内を明かす。

 開山後は約10人が常駐する山頂の月山神社本宮。ここでも雨水や雪解け水をろ過し、貯水槽に移して使っているが、水の使用量を切り詰めざるを得ない状況だ。参拝客に対応する神職や住み込みの職員が風呂、シャワーを控えるなど不自由な生活を強いられている。2日に1回飲料水が麓から12リットルほど運ばれるものの十分ではない。食事では、洗い物が出ないよう使い捨ての紙皿を使用している。神職の1人は「これ以上厳しい生活は続けられない」と、神頼みするしかない状況だ。