39年前の春、福井市で卒業式を終えたばかりの女子中学生が殺害された。犯行の目撃者はおらず、犯人を示す指紋など直接的な証拠は見つからないまま捜査は難航。約1年後「事件後、服に血が付いている姿を見た」などという知人らの証言から、市内に住む前川彰司さんが逮捕された。前川さんは一貫して無実を訴えたが、こうした証言をもとに懲役7年の判決が言い渡され、服役した。しかし一昨年、それらの証言の信用性を揺るがす事実が判明した。その結果、裁判がやり直されること(再審)が決まり、判決が今月18日に言い渡される。前川さんの闘いの結末は―。(共同通信=中野湧大)

▽暴力団関係者の「有力」情報

 1986年3月19日の夜、福井市の市営団地の部屋で、この部屋に住む中学3年の女子生徒=当時(15)=が包丁で刺されるなどし、変わり果てた姿で見つかった。福井県警は捜査本部を設置、捜査を始めた。しかし、手がかりは思うように得られなかった。

 事件から7カ月がたった頃、暴力団関係者Aからある証言が県警にもたらされた。シンナー吸引の非行歴のあった前川さんと同じ中学の先輩で、自身も薬物犯罪で勾留中だったA。「事件翌日の朝、服に血を付けていた前川さんを見た」「前川さんが頼ってきたので、かくまって血の付いた服を着替えさせた」と話し、事件前後に前川さんと関わったという複数の男女の名前を挙げた。
 情報をもとに県警が事情を聴いたところ、名前の挙がった男性Bは「Aに頼まれて前川さんを迎えに行き、着ていた服に血が付いているのを見た」と証言。他の男女も「前川さんを連れて被害者宅に行った」「犯行を告白された」などと話した。
 
 こうした証言を踏まえ、事件から約1年後、県警は21歳だった前川さんの逮捕に踏み切った。