シリア南部での武力衝突へのイスラエルの介入をめぐり、米国のバラック駐トルコ大使は19日、イスラエルとシリアの両首脳が停戦に合意したとSNSに投稿した。シリア側も19日、「包括的かつ即時の停戦」を発表したが、衝突が収束に向かうか不透明な状況だ。
バラック氏によると、停戦はルビオ米国務長官が仲介し、イスラエルのネタニヤフ首相とシリア暫定政権のシャラア大統領が合意した。トルコやヨルダンなどの近隣諸国も支持したという。
シリア南部スウェイダ周辺では13日、イスラム教の少数派ドルーズ派とイスラム教スンニ派のベドウィン(遊牧民)が衝突。スンニ派主導の暫定政権軍が鎮圧にあたったが、在英NGOシリア人権監視団(SOHR)によると、19日までに900人以上が死亡した。
自国や占領地ゴラン高原にドルーズ派が暮らすイスラエルは、暫定政権軍がシリアのドルーズ派を虐殺しているとし、同軍の撤退と南部の非武装化を要求。首都ダマスカス中心部の国防省などを空爆するなど緊張が高まっていた。
暫定政権軍は17日にいったん撤退したものの、武力衝突が続いたため、停戦を実現するためだとして19日、再び部隊を派遣した。ロイター通信がイスラエル当局者の発言として報じたところによると、イスラエル側も、48時間の間だけ暫定政権による派兵を認めたという。
暫定政権のシャラア大統領は19日、演説で「状況を沈静化させた」と主張。大統領府は声明で、「すべての当事者」に対し、停戦を尊重するよう求めた。
一方、現地では人道状況の悪化が伝えられている。国際移住機関(IOM)は一連の衝突によって、約8万人が避難を余儀なくされたと発表。水道や電気、交通、通信などのインフラがまひしているという。AFP通信が伝えた。(根本晃)