(24日、第107回全国高校野球選手権熊本大会決勝 東海大熊本星翔4―2有明)

 「自分たちがやってきたことを出そう」。有明の青木一志主将(3年)は、ピンチになると伝令に走り、マウンドに集まった仲間を励ました。

 背番号は20。昨秋は10をつける2番手投手だったが、今年2月ごろ、トレーニング中に利き腕の左肩を痛めた。何とか夏のマウンドに立ちたい。練習を続けたが、球速が以前より10キロ落ちるなど、本来の調子に戻らなかった。

 「チームに迷惑をかけたくない」。6月ごろ、裏方としてサポートに徹する、と決めた。「自分が投げて負けるのは耐えられない。チームが甲子園に行くためには、これしかない」

 「主将のためにも勝ちたい」。悔しさを知る仲間は今大会、快進撃を続けた。自慢の機動力で得点を積み重ね、2年生エースの斉藤遼汰郎投手が力投。準決勝では、昨夏の覇者・熊本工に5―0で勝利。初めての夏の決勝進出という「歴史」を刻んだ。

 迎えたこの日は、先行を許す苦しい展開。「ここからだぞ」。青木主将が声をかけ続けると、チームは八回に2点をかえした。九回もチャンスを作り、最後まで諦めない姿勢を貫いた。

 「最高のチームに仕上がった」。試合後、青木主将は胸をはり、後輩に思いを託した。

 「何かが足りなかった。この悔しさを胸に、来年こそ、甲子園に行ってほしい」(林国広)