【熊本】水俣病の原因企業チッソが6月27日、大阪市内で株主総会を開き、2024年度決算が報告された。業績改善が思わしくないことから、株主からは今後の見通しを問う質問が出た。

 売り上げの多くを占める肥料が持ち直し、新しい業績改善計画の24年度目標は達成した。だが、政府が求める水準には遠く、公的債務の返済は5年連続で国が全額を立て替える。

 09年施行の水俣病被害者救済法(特措法)の枠組みでは、チッソの事業を移した中核子会社のJNCが好業績を上げて上場できた時点で株式を売却し、売却益を債務返済の原資に充てる構想を描いていた。だがその後、業績は悪化しており、その実現は遠のいている。

 総会では今後の見通しについての質問が株主から出されたが、山田敬三社長は「ご不満はあると思うが、(上場に至らない)今の状況は続く。業績改善にむけてがんばる」と答えるにとどめた。

 山田社長を含め6人の取締役が選任されたが、全員が男性。総会では女性登用についても尋ねられた。山田社長は「JNCには女性の執行役員が1人いる。増やしていくつもりでやっている」と述べた。

 総会終了後、山田社長は取材に応じ、「水俣製造所がかかわる肥料やライフケミカルといった戦略事業を次の柱に据え、液晶に代わる柱にしていきたい」。野党6会派が国会に提出した水俣病被害者の新たな救済法案については「相談されていない。コメントする立場にない」と述べた。

 また、来年には水俣病が公式確認70年を迎えることについては「節目の年だから特別なことをやるわけではない。補償と地域への貢献を従来通り続けていく」と話した。(今村建二)