「最北の秘境駅」として親しまれながらも3月に廃駅となったJR宗谷線の旧抜海(ばっかい)駅(北海道稚内市)の解体工事が16日から、本格的に始まった。作業は3週間足らずで終える予定だ。
旧抜海駅は1924年に開業。旧国鉄時代の風情が残る木造駅舎は映画やドラマのロケにも使われ、全国の鉄道ファンが訪れた。市がJR北海道への維持管理費の支払いを今年3月で打ち切り、廃駅となった。地元住民らは観光資源としての利活用を求めたが、市は「観光的な価値はない」と聞き入れなかった。
JR北によると、旧駅舎は前日に足場が組まれ、解体工事が本格化した。29日から重機で取り壊し、8月2日には作業を終える予定だ。廃線後に積雪で倒壊した旧峠下駅(JR留萌線、留萌市)の例もあり、JR北は安全対策などを理由に取り壊しを決めたという。
シンボルの貝殻片で作られた駅名板やホームの隣駅表示板、ホーロー製の駅名看板などは地元の2町内会に戻された。100年余の歴史がある駅舎の解体に、地元の人たちは「何も地元に知らせはなかった。あっけないものだ」「惜しむ間もない」と寂しさをにじませていた。
一方、国土交通省北海道運輸局は16日、国が安全対策を2年程度、監視し続ける「強化型保安監査」が全国で初適用されているJR北に、今年3回目の立ち入り監査に入った。もともとは8〜9月の予定だったが、前回5月の立ち入り後も作業員が置き忘れた工事用具に貨物列車が接触するなどのトラブルが続いたため前倒しした。(奈良山雅俊、上地兼太郎)