全国唯一とされる妖怪専門の博物館「三次もののけミュージアム」(広島県三次市)などの所蔵品を紹介する企画展「妖怪累累」が、高知県南国市の県立歴史民俗資料館で開かれている。土佐の妖怪に関する展示コーナーもあり、妖怪の世界観を存分に楽しめる。9月7日まで。
企画展は、コレクターから寄贈を受けた妖怪の資料約5千点を所蔵する同ミュージアムなどから絵巻や冊子などを借り、約80点を展示している。
「土佐化物絵本」(高知県立文学館所蔵)に描かれた妖怪「黒坊主」は、現在の高知県大豊町の杖立峠で通行人が見たと伝えられている。この峠では、「ドウロク神(じん)」という黒い大男を見たという話もあるとされ、「妖怪に会いやすい峠だったようだ」と歴史民俗資料館の梅野光興学芸員は話す。
「土佐お化け草紙」(個人蔵)に載っている妖怪「山父(やまちち)」は、現在の高知県いの町などの土佐山中にすむと伝えられ、「ヤマジイ」とも呼ばれていたという。老人のようだが目が一つで、イノシシやサルの頭もダイコンのように食べると言われ、人間を食べようとして、逆に退治されてしまう昔話もあるという。
また、1791年6〜7月に現在の高知県本山町の百姓の家付近で目撃されたと伝わる名前のない「奇獣」の図(三次もののけミュージアム所蔵)は、しま模様の小動物のよう。梅野学芸員は「大きさや毛の生え方まで具体的に記され、この生き物が実在した記録であることを物語るかのようだ」と話した。
また、企画展については「昔の日本人の想像が生み出した様々な妖怪たちの姿を、見て楽しんでもらえたら」と呼びかけている。観覧料は大人(18歳以上)700円、高校生以下無料。問い合わせは同館(088・862・2211)。(森直由)