アユロード 第2章 <7>
馬瀬川上流がある岐阜県下呂市出身で、束釣りが当たり前の人呼んで「馬瀬で最も釣る男」がベールを脱いだ。近年の好調ぶりとは対照的に小型化や魚影の薄さが聞こえる同川を攻めた。父の背中を追いかけ、馬瀬を駆ける「アスリート」に密着した。 (9日取材・柳沢研二)
昨年G杯準優勝
島田雅司さん(48)は神奈川県藤沢市で鍼灸(しんきゅう)治療院を経営する傍ら、馬瀬川上流に通う。昨年のG杯では頂点にまで迫る勢いで準優勝に輝いた。父は本紙などでおなじみ同市の名手・島田岩男さん(76)だ。
雅司さんは子どもの頃、家の前を流れる竹原川で友釣りは経験していたものの、下呂市を離れた高校卒業後は遠ざかっていた。2010年、父が肺がんになったとき、「アユを釣ることが父にとって生きる意味だったと知りました」と雅司さん。手術後に川へ行く気力がなかった父に「俺もやるから教えて」と一緒に釣行するようになって技術を吸収した。その川が馬瀬川だった。
一撃必殺の釣り
ここ数年は時速12〜16匹で束釣りも珍しくない雅司さんだが、今年の馬瀬川上流は数が出ない。朝から法水観音前を探ったが単発で、ふれあい橋上流へ。瀬肩の緩い流れを探ると16、17センチを中心に掛かる。幾筋もの流れを小刻み探っていく。オーナーカップ8強の実績も持つ。
雅司さんは20歳代に極真空手や格闘技にのめり込んだ。「アユは送り出しで掛けたいのです」と語るが、これは空手で言うところの「一撃必殺」か。友釣りはアユとの間合い、呼吸といった武道や格闘技にも通じるものがある。