◇20日 大相撲名古屋場所8日目(IGアリーナ)

 新横綱の大の里(二所ノ関)が平幕の伯桜鵬(伊勢ケ浜)に押し出されて2敗目を喫し、2個目の金星を配給した。伯桜鵬は初の金星となった。

 伯桜鵬がギアをトップに入れた。苦し紛れに引いてきた大の里のすきを見逃さなかった。土俵下まで持っていく一気の押しで初金星。「テレビでは座布団が舞う光景を見たことがあるんですけど。まさか自分が勝って、目の前で見られるとは。夢には思ってましたけど」。自然と笑みがこぼれた。

 父・落合勝也さんが気づかせてくれた必勝パターンだった。「このイメージでいけ」と鳥取城北高2年のときの動画が父から届いた。日体大時代の大の里との稽古。引いてきたところについていき、一番だけ勝った場面が映っていた。

 「横綱が引いたときにチャンスがくると思ってたんで。(当時と)同じ勝ち方だった。ああいう勝ち方しか見えなかったんで」。大の里とはアマで1敗、プロで1敗。初勝利に結びついた。

 最高の親孝行だ。この日、鳥取県倉吉市の実家から両親が観戦に訪れていた。8日目に来ることは聞いていた。「横綱か大関にあたる」と場所前に予想。新十両だった2年前の春場所を両親が見に来たときは、「おやじの誕生日に豪快に負けてるんで」と悔いを残していたからこそ、「絶対に勝つ」。強い気持ちで挑み、「両親にいいとこ見せたいと思って。よかった」と言ってまた笑みがこぼれた。

 懸賞金は56本。「受け取るときに、顔に出そうになったっす。うれしくて」。今場所は同部屋で新入幕の草野が、「令和の新怪物」と注目を浴びている。19歳だった2年前の名古屋場所で新入幕を果たし、千秋楽まで優勝を争った伯桜鵬は「令和の怪物」。再び輝きを取り戻してきた。