開店と同時に次々とお客さんが訪れる地元で根強い人気を誇るベーカリー「ナカガワ小麦店」。そのパンは、シンプルで滋味深く、毎日でも味わいたくなるといいます。また、あえて「小麦店」と名乗っていることから、素材へのこだわりは並々ならないものがありそう。小麦のうま味がギュッと詰まったパンを味わってみませんか。

下鴨神社西参道からすぐのパン屋さん

「ナカガワ小麦店」へは京都駅からバスで約30分の下鴨神社前で下車し、少し北に行くと、木とガラス張りのシンプルな店構えが見えてきます。オープンしたのは2011年のこと、今年で14年目になる町のパン屋さんです。

おいしさの秘密はこだわりの自家製粉

笑顔で出迎えてくれたのは店主の中川 恵介さん。安心、安全なパンを作りたいという思いから、有機小麦など素材を厳選するようになったのが、こだわりへの始まりでした。今では8種類ほどの小麦をパンの種類によって使い分けています。

なかでも、繊維やミネラルが豊富な全粒粉は挽いた後の劣化が早いので、店ではカナダ産の有機玄麦を自家製粉しています。聞けば、パン棚にちょこんとセットされている木製の道具が製粉に使う石臼だそう。パンを焼く前日に、使う分だけを挽きます。

飛ぶように売れる人気のパンたち

ハード系の「フリュイ・ルヴァン」は、2種の小麦とドイツのライ麦、カナダの全粒粉を使ったパン。天然酵母のルヴァン種で発酵させることで、香りが複雑になり味に深みがでます。生地にトルコ産有機イチジクとクルミがたっぷり練り込まれている、食べ応えのあるパンです。

「プチ・モンターニュ」は、食パンの生地を小さく丸めた食事パン。北米産の有機小麦100%で、甘味がありもっちりとした食感です。とはいうものの、食パンのフワフワというイメージではなく、力強ささえ感じる弾力があります。

「パン・オ・ショコラ」は、生地にベルギー産のチョコレートが入ったおやつパン。産地の異なる有機小麦が数種と、農薬や肥料について有機栽培よりももっと厳しい基準で育てられた北海道の「自然栽培小麦」が使われています。外側のホロホロッとした口あたりと、内側にいくにつれて増すしっとり感、そんな食感の変化が面白い逸品です。

中川さんによると、まず作りたいパンの味や食感といったイメージがあって、そのイメージに近づくよう、使う小麦や、酵母、焼き方など、さまざまな要素を決めていくそうです。

どのパンも、ていねいに時間と手間を惜しまず作られていることが伝わってきて、開店と同時に行列ができるのにも納得できます。地元だけではなく、パンを求めて遠くから訪れる人も多いようで、パンの街・京都を旅するなら、ぜひ立ち寄りたい一軒です。