トーナメントで使用するコースは通常よりもラフを長く伸ばし、グリーンは硬く、速く仕上げられます。今回、国内男子ツアー「〜全英への道〜ミズノオープン」開催直後のJFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部(岡山県笠岡市)でラウンドする機会に恵まれました。そして、一般営業とは違う「ツアー仕様」のコースを回ることで、本当の意味でアイアンに必要な性能を再確認できましたので、ご紹介していきます。
シビアなショットコントロールが要求されるツアー仕様のコース
ゴルフのトーナメントは毎週のように開催され、ツアープロたちは高額賞金を懸けて1打を競い合っています。そんなツアープロたちがプレーするコースは、通常とは一味違った特別なコンディションに整えられていることが多いです。

例えばラフは簡単に脱出できないように長く伸ばされます。ティーショットを曲げてラフに打ち込むと、長い芝の中にボールがすっぽりと埋まったような形になるため、そこからグリーンを狙うには相応のパワーと技術が必要になります。グリーンもローラーなどで地面を硬く締めて、芝を短く刈り上げることで高速化されます。狙った位置にボールを止めるには、高くスピンの効いたショットが必要になりますし、グリーン上のパッティングでは繊細なタッチの打ち分けが要求されるわけです。
コースを「ツアー仕様」に整える理由は、選手のポテンシャルを最大限引き出し、フェアな環境でスコアを競えるようにするためです。長いラフは明確なペナルティーとなるため、いいショットと悪いショットでしっかりと差が出ることになりますし、硬く速いグリーンは安定したキレイな転がりを得ることができます。
通常、「ツアー仕様」にセッティングされたコースを回る機会はなかなかありません。しかし今回、国内男子ツアー「〜全英への道〜ミズノオープン」が開催された直後のJFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部(岡山県笠岡市)でプレーする機会に恵まれました。QTを受験した経験を持つ筆者(ゴルフライター・田辺直喜)が、ツアープロが切磋琢磨(せっさたくま)する厳しいセッティングのコースをプレーして見えたことを解説していきます。
グリーンが難しくなるほどアイアンの高さ、スピン、操作性が必要になる
まず前提として「ツアー仕様」のコースであっても、ドライバーを使ったティーショットでは一般営業のコースとの差はあまり感じませんでした。もちろんラフが長いことによる圧迫感はありますが、基本的にティーアップして打てるクラブですので、いつもと同じ感覚でプレーできます。

一方で、セカンド以降のショットでは非常に大きな違いを感じました。グリーンが硬く締まっているので、フェアウェイから打ったとしても、しっかり高さが出て、スピンも効いていなければボールは止まってくれません。今回のラウンドでは大会最終日と同じ厳しい位置にピンが切られていたこともあって、グリーンを狙うショットを打つ時にはかなり頭を使いました。
ピン位置に対してボールを上下左右どの位置に付けるかで次のパッティングの難易度が大きく変わりますし、場合によってはグリーンを外すマネジメントを考える必要がありました。
そういった状況を踏まえると、今回のラウンドで使用したミズノの「S-3」アイアンは非常に使いやすいモデルでした。「S-3」は軟鉄鍛造のいわゆるツアーモデルで、心地いいフィーリングと操作性の高さが特徴となっています。一般的に寛容性が低く、難しいといわれることもあるモデルですが「ツアー仕様」の硬く、速いグリーンを狙う上では心強い武器になりました。
まずヘッドの挙動がニュートラルで、弾道をコントロールしやすいです。意図とは違う「逆球」が出にくいので、安心してスイングできました。コンパクトかつ抜けのいいソールのおかげで長いラフでもボールを上げやすいですし、スピンがしっかり入るので、グリーンに止まる球が打ちやすくなっています。何より変に飛び過ぎることがないので、ミスをしたとしてもケガが少なく済むので、結果としてスコアが安定するといえるでしょう。
ツアープロの多くが軟鉄鍛造のアイアンを選ぶ理由が「ツアー仕様」のコースを回ることではっきりと感じ取れました。アイアンというクラブは突き詰めると、ただ飛ぶよりも、高さやスピン性能、操作性が大切で、プレーするコースが難しくなるほど、そういった性能が必要になってくるのです。
筆者は今までツアーモデルのアイアンを多く使用してきました。今年で40歳になったこともあり、飛距離の衰えを感じることが増えたので、ギアで飛距離を稼ぐことも考えていました。しかし、飛距離の出るアイアンは想定以上に飛びすぎたり、逆に飛ばなかったりというタテ距離のブレがどうしても出てしまいます。狙い通りの距離と球筋でボールを飛ばせるツアーモデルアイアンは、スコアメークの上で大きなメリットがあることは間違いないでしょう。
アイアンを選ぶ上で、飛距離性能を気にする人は多いと思います。同じ7番で打って今までよりも飛ぶ、といった性能はプレーを楽しむ上では大きな魅力です。しかし、スイングを上達させ、スコアアップを目指すのなら、やはり操作性に優れたツアーモデルアイアンは有力な選択肢になります。特に軟鉄鍛造のモデルは打感や打音などのフィーリングも心地良くなっていますので、上達志向の強いゴルファーにはぜひ一度試していただきたいです。
田辺直喜