山好きの知人に聞いたことがある。頂に立つと、はるかかなたに高い峰がそびえている。征服欲が湧き、また向かう。果てしない繰り返しこそ、登山の魅力だと▼校名のせいもあるだろう。高校野球県大会決勝を戦った会津北嶺ナインに、その言葉をかみしめた。ノーシードで臨み、初戦を大勝した。勢いは止まらず臨んだ聖光学院との大一番。一気の猛攻で、全国に名をとどろかす強敵を慌てさせた。最後に挑んだ山頂は、手が届きそうでわずかに…。モットーの「攻撃野球」を終始貫く潔い戦法に、県内のファンは新たな潮流を予感しただろう▼雑草のたくましさが伝わってくる。校名変更を機に創部して8年。初めての県大会は0―39の大敗だった。「いつか必ず、あの日の雪辱を果たす」―。誓いを胸に、メンバーは連日、8キロ離れたグラウンドに自転車で通った。冬場には雪かきのボランティアで足腰を鍛えた。ひた向きな姿に住民はエールを送り、ともに甲子園の大きな夢を描いた▼九回表、最後のヒットで一塁を踏んだ飯島統生選手。気迫のガッツポーズが、目に焼き付いて離れない。まだ1年生。憧れの名峰に、栄光のフラッグを掲げる日がきっと来る。<2025・7・26>