ドイツ・メルヘン街道のほぼ中央にある中にあるカッセル(Kassel)は、グリム兄弟が30年以上の長きにわたって暮らし、グリム童話の枠組みができあがった場所です。兄弟はこの地でグリム童話のもととなるお話を収集し、1812年にグリム童話の第一巻となる『子どもと家庭のメルヒェン集』を刊行しました。
カッセルは、5年に一度、開催される世界最大級の現代美術展「ドクメンタ」が開かれることでも知られています。上写真はドクメンタの会場となるフリデリチアヌム(美術館)。第二次世界大戦で大きな被害を受け、現在の姿は戦後に再建されたものですが、18世紀中頃に建てられた最初の建物はグリム兄弟が勤めていた図書館だったそうです。
そんなグリム兄弟ゆかりの地であるカッセル。この記事では、カッセルのおすすめ観光スポット「グリムワールド」と「ヴィルヘルムスヘーエ丘陵公園」を紹介します。
グリムワールド(GRIMMWELT)
カッセル市庁舎の近くにあるグリムワールド(ドイツ語ではグリムヴェルト/GRIMMWELT)は、童話収集家で言語学者のグリム兄弟の偉業と作品を紹介・展示した博物館です。
2015年に旧グリム兄弟博物館が生まれ変わったもので、グリム兄弟の直筆の手紙や多数のグリム童話の初版本、映画やサウンド、マルチメディアアプリケーション、インスタレーションなどが展示されています。
展示は、AからZまでのアルファベットで構成されていますが、アルファベット順ではありません。見学ルートはZETTEL(ドイツ語で「紙切れ」)のZから始まります。
ZETTELセクションにはヤーコプ・グリム直筆の手紙が展示されているほか、彼らが誰と連絡を取り誰と科学的な共同研究を行っていたかがわかる映像展示もあります。
グリム童話の貴重な初版本や、グリム兄弟に40以上もの物語とそのバリエーションを語った女性、ドロテア・フィーマンに関する資料も。
グリム兄弟はグリム童話の編纂でよく知られていますが、ドイツ語言語学者としての顔も持ち、生涯をかけてドイツ語辞典の作成に取り組みました。存命中には「F」までしか進みませんでしたが、その後グリム兄弟の後を引き継いだ学者たちが完成させたドイツ語辞典を見ることができます。
エンターテイメント施設というより、学術的な施設ですが、子どもも楽しめるような工夫がされており、見ごたえがあります。グリム童話やグリム兄弟、そしてドイツ語に興味のある方はぜひ足を運んでみてください。
名称 GRIMMWELT
所在地 Weinbergstraße 21, 34117 Kassel
Webサイト(英語) https://www.grimmwelt.de/en/
ヴィルヘルムスヘーエ丘陵公園
カッセルの町の西側にあるヴィルヘルムスヘーエ丘陵公園(Bergpark Wilhelmshöhe)は、18世紀ヨーロッパを代表するバロック庭園です。1689年にヘッセン=カッセル伯爵カールがバロック庭園をここに造り、19世紀にかけて拡張されていきました。総面積560ヘクタールと、丘陵地の斜面にある公園としてはヨーロッパ最大規模を誇るこの公園は、世界遺産に登録されています。
中央のカールスベルクと呼ばれる丘にカスケード(階段状の連滝)が作られており、その頂部には高さ9.2メートルのヘラクレス像が立っています。長さ350メートルの石段を一挙に28万リットルの水が流れ落ちる景観は非常にダイナミックです。階段のテラスには水の力を利用して石像が大音量でラッパを吹く仕掛けもあります。
ヘラクレスの像の背後にある貯水池と水路から、段差による水圧を利用した装置により水が流れ落ちるショーが見られるのは、毎週水曜日と日曜日、そしてヘッセン州の祝日だけです。14時30分に水が流れ始めると、観光客はその水を追いかけるように階段と坂道を下っていきます。
水の芸術と言われる森をめぐる水路には、洞窟や庵、滝が石の間を幾筋にも分かれて落ちる滝、悪魔の橋、ローマ遺跡の水道橋を模した水道橋などの見どころがあります。展開した水路は公園内に点在する湖や池にもつながっているそうで、公園のスケールに圧倒されました。
最後の地点では、15時45分頃から水が50メートルを超える高さまで噴き上がる様子が見られます。ポンプなどの機械は一切使わず、高低差による水圧だけで噴き上げているというから驚きです。