日立製作所「Lumada」やNEC「BluStellar」など、大手各社がDXブランドや価値創造モデルを立ち上げる中、三菱電機は2024年5月にデジタル基盤「Serendie」(セレンディ)を立ち上げた。同社DXイノベーションセンターが主体となって運営しており、長年培ってきたモノづくりの強みと、データ活用による新たな価値創出を融合させる狙いがある。

 Serendieでは、従来は事業本部ごとに独立していた機器やシステムのデータを横断的に集約・分析。顧客や社会の潜在的な課題を発見し、解決策へとつなげる「循環型 デジタル・エンジニアリング」の具体的な実現手段の構築を担う。

 なぜ三菱電機は、他社に続く形でSerendieを立ち上げたのか。同社執行役員で、DXイノベーションセンターの朝日宣雄センター長に聞いた。

●「モノ売り」から事業横断へ 変革のきっかけは?

――まずSerendieがどういうものなのかを教えてください。

 もともとは、2022年に現社長の漆間啓が「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」を目指すという経営戦略を打ち出したのが始まりです。これは、私たちが販売した機器やシステムから集めたデータを活用し、その中から顧客の課題を見つけ出してソリューションを作り、展開していく4つの段階から成り立っています。

 私たちはもともと製造業としてモノを売ってきましたので、データを分析して困りごとを見つけ、それをハードに反映してきました。一方で、システムやソリューション事業、つまりソフトを直接的に提供することには不慣れでした。もちろん、ソフトを担う部隊も社内にはありますが、多くの場合は従来型のハードを扱うビジネスが中心でした。