愛知県日進市で地域活性化に取り組む団体「進盛隊」と中学生が作ったユニークな焼き菓子が注目を集めている。その名は「徳川さんの繁栄は俺の功績 全滅クッキー」。徳川家康と羽柴(豊臣)秀吉が相対した小牧・長久手の戦いの一つで、徳川軍勝利の転機になったとされる同市が舞台の岩崎城の戦いを題材にした商品だ。開発者は「歴史も味わって」と話す。(共同通信=片山歩)

 1584年、徳川軍と羽柴軍がにらみ合う中、岩崎城(日進市)を拠点とする丹羽一族は徳川方として参戦。城主の兄が不在で留守を預かる16歳の丹羽氏重は、羽柴方の池田恒興が率いる約6千人の兵を見つけ、約300人で立ち向かったが全滅、落城した。ただ池田軍を足止めしたことが徳川軍の危機を救い、後の勝利につながったとされる。

 市制30周年となった昨年、地元の中学生が中心となり、進盛隊と共にこの戦いを再現するイベントを開催した。さらに「もっと多くの人に日進市を知ってほしい」と考え、新名物となるような菓子の開発を進盛隊に提案した。

 出来上がった商品は2種類の味のクッキーで、1箱に21枚入り。岩崎城の戦いを反映させ、丹羽家の家紋をデザインした「プレーン」1枚に対し、池田家の家紋の「ココア」は20枚で、箱の中で兵力差を表現。クッキーを食べきる“全滅”によって、徳川家のように、後の繁栄につながるよう願いを込めている。

 今春発売し、購入者からは「歴史に思いをはせながら、おいしく味わえる」などと好評という。開発に携わった日進市の高校1年上田凌久さん(15)は「自分たちが考えたことが広まってうれしい」と笑顔を見せた。

 クッキーは市内の喫茶店「コーヒー錦」で不定期で販売。在庫状況は、進盛隊の交流サイト(SNS)で確認できる。