山梨県北杜市が、馬を生かした町づくりに注力する。その中心は小淵沢エリアにある県馬術競技場で、2028年ロサンゼルス五輪を目指す選手らには「総合馬術の聖地」と呼ばれる。自然と地形に恵まれており、躍動する人馬の姿は観客らを魅了。市の担当者も「ブランド価値を向上させる存在」と期待を寄せる。(共同通信=山田浩平)
5月下旬、馬術場にあるクロスカントリーコース。選手と馬が木の葉をかすめながら木々の隙間を走り、激しく水しぶきを上げながら水濠を駆け抜けた。急角度の山道を駆け上がると、観客から歓声が湧いた。
2024年パリ五輪で92年ぶりにメダルを獲得し「初老ジャパン」の愛称で話題になった戸本一真選手(42)は「自然の障害物が魅力だ」と指摘。全日本総合馬術ヤングライダー選手権優勝の細野光選手(20)も「激しいアップダウンを攻略するのが楽しい」と笑う。
小淵沢エリアは冷涼な気候と豊かな自然を背景に、古くから馬の産地として知られる。南アルプス八ケ岳の南麓に位置する馬術場は総面積22ヘクタール。東京ドームの5倍に当たる国内有数の施設だ。
馬場馬術、クロスカントリー、障害馬術の三つで争う総合馬術にも対応できる。2025年4月には、日本オリンピック委員会(JOC)の強化拠点に認定された。長崎幸太郎知事は「『馬のまち小淵沢』の中核施設として、地域振興への貢献に大いに期待する」と語る。
馬術場を運営する県馬事振興センターの渡辺聡尚専務理事(61)は「間近で人馬を見ることができる。迫力を体感してほしい」と話す。市政策推進課の担当者も「馬術をきっかけに足を運んでくれたら」とPRする。