Appleは、ユーザーを自社のエコシステムに深く没入させる天才です。iPhone、Mac、Apple Music、Apple TV+——気づけば、私たちのデジタルライフはAppleの色に染まっています。

かつて、これらのサービスを個別に利用すると、その費用は決して安くはありませんでした。

その状況を打破すべく2020年に登場したのが、複数のサービスを束ねるApple One

しかし、この5年間で価格は大幅に上昇。当初は月額14.95ドルからだった個人プランは、今や19.95ドルから(個人プランは月額1,200円。ファミリープランは月額1,980円)となっています。

本質的な問いはこれです。

私たちは、この値上げ分に見合うだけの新たな価値を享受できているのでしょうか?

それとも、Appleの巧みなエコシステム戦略の上で、本当に必要のないサービスにまで費用を支払わされているのでしょうか?

今回は、Apple Oneの価格とサービス内容の変遷を深く分析し、あなたが自分自身の利用スタイルに照らし合わせて、もっとも賢明な選択を下すための「判断基準」をご紹介します。

最新!Apple Oneの3つの料金プラン

現在、Apple Oneには3つのプランがあり、基本的な構成はこれまでと変わりません。2025年現在のプランは以下の通りです。

  • 個人プラン: Apple Music, Apple TV+, Apple Arcade, 50GBのiCloud+ストレージが利用可能。月額19.95ドル(2020年は14.95ドル、日本円で月額1,200円)。
  • ファミリープラン: 最大6人まで、Apple Music, Apple TV+, Apple Arcade, 200GBのiCloud+ストレージが利用可能。月額24.95ドル(2020年は19.95ドル、日本円で1,980円)。
  • プレミアプラン: 最大6人まで、Apple Music, Apple TV+, Apple Arcade, Apple Fitness+, Apple News+, 2TBのiCloud+ストレージが利用可能。月額37.95ドル(2020年は29.95ドル、日本円で3,780円)。

この時点で、すでにいくつかの重要なポイントが見えてきます。

第1に、米国労働統計局の公式インフレ計算機によれば、これらのプランの価格上昇率は、単純なインフレ率を上回っています

第2に、Apple News+とApple Fitness+は安価なプランでは利用できない点で、これは当初から変わりません。

第3に、Appleマニアの家族にとっては依然として大きな価値があるものの、基本的なサービス内容は変わっておらず、Apple One加入者向けの特別なアプリ内特典などもありません。

これはAppleにとってあまり良い印象を与えないかもしれません。しかし、話はこれらの数字が示すほど単純ではありません。

Appleは価格上昇に合わせて、2020年以降サービスを改善してきました。もっとも、その恩恵はプランによって受けられる度合いが異なります。

2025年現在、Apple Oneで得られる各サービスの内容を見ていきましょう。

ゲームやレシピも楽しめるApple News+

Apple One加入者にとって、価値がもっとも大きく向上したかもしれないのがApple News+です。

残念ながら、これはプレミアプラン限定の特典であり、日本では未提供の機能となっています。

どうやらAppleは、ニューヨーク・タイムズ紙のようなメディアを参考にしているようで、最近はゲームやレシピといったコンテンツに力を入れています。

直近では、2025年の「世界絵文字デー」に合わせて、Wordleの絵文字版のような「Emoji Game」が登場。これは2023年に始まった日替わりのクロスワードや数独といった既存のパズルを補完するものです。

絵文字に興味がなくても楽しめるパズルは十分にありますが、この最新の追加機能はもっともユニークで、今後も続いてほしい独自の体験を創り出そうという意気込みが感じられます。

もしパズルが苦手でも、News+アプリにはこの春から「Food」セクションが追加され「数万点のレシピ、レストランレビュー、キッチンのヒントなど」が満載。

これらはAllrecipesやSerious Eatsといった無料で記事を公開しているサイトからも引用されていますが、Appleの編集者がキュレーションし、フィルターしやすく、デザイン的に統一感のあるリストにまとめてくれています。

正直なところ、私がニュースに求めるのはパズルやレシピではありませんが、今や私が少数派であることは承知しています。

これらの追加機能により、AppleはNYT Gamesのようなアプリが人気を博す中で、自社のサービスの魅力を保とうと必死になっているのです。

音楽体験が深化するApple Musicの新機能

Apple Musicが2020年以降、独自のアップグレードを重ねてきたことに歓喜している人も多いのでは?

もっとも注目すべきは、2021年にApple Music+がカタログ全体で空間オーディオとロスレスオーディオを追加料金なしで導入したことです。

そして、間もなく登場するiOS 26では、それ以来で最大規模の新機能が追加される予定です。

  • 時間同期された歌詞の翻訳
  • 歌詞の発音ガイド
  • トラックをシームレスにつなぐ「Automix」機能
  • ロック画面でのアニメーション付きカバーアート
  • お気に入りのプレイリストのピン留め機能
  • iPhoneとApple TVを使ったカラオケ機能

これはかなりの充実ぶり。この機能はまだ正式リリースされていませんが、開発者向けベータ版で試すことが可能です。

ワークアウトをサポートするApple Fitness+の進化点

Apple Fitness+がStravaとの連携に対応し、より正確なランニング統計が取れるようになりました。もしあなたがランニングアプリ「Strava」のユーザーなら大絶賛するはず。

ほかにも、複数週にわたるエクササイズプログラムで体を段階的に鍛えたり、2023年に導入された「カスタムプラン」がより見つけやすくなったりといった改善が加えられています。

ゲーマー注目!Apple Arcadeの現在地

Apple Arcadeはサービス開始以来、少し変わった存在でした。

家庭用ゲーム機やPCからの人気タイトルの移植や、完全新作の独占ゲームを提供し、そのすべてにアプリ内課金が一切ありません。

ラインナップは常に変化しており、新しいゲームが追加される一方で、配信終了になったり、独占でなくなったりするタイトルもあります。

『ソニックドリームチーム』のような個人的なお気に入りもありますが、タッチスクリーン操作に慣れたiPhoneゲーマーが主なターゲット層であることを考えると、より伝統的なゲームに焦点を当てた戦略は賛否両論を呼んでいます。

Apple Arcadeがあなたにとって価値があるかどうかは、加入時のライブラリ次第でしょう。

しかし、今後のアップグレードで、ゲーム内容に関わらず利便性が向上する点が1つあります。それがiOS 26で登場する「Apple Games」アプリです。

このアプリ自体は誰でも利用できますが、コントローラーで操作可能で、Apple Arcadeの全ゲームを集中を妨げるものなく一覧表示してくれます。

App Storeをスクロールして探す手間が省けるのは、大きな改善点です。

ヒット作連発!Apple TV+の快進撃

Apple TVの体験は、長年にわたり数々の機能改善がなされてきました。

特に、tvOS 18ではアプリが再設計され、コンテンツの発見が容易になったり、字幕やダイアログの強調機能が改善されるなど、大きな変更がされています。

問題は、これらの改善の多くがApple TVの所有者限定だったこと。

しかし、Apple TV+アプリを搭載するすべてのデバイスがサポートしていることが1つあります。それは、新しいApple TV+の番組をストリーミング視聴できることです。

Appleのストリーミングライブラリは、2020年以降、数々の大ヒット作を生み出してきました。その中でも特に大きな話題となったのが、ベン・スティラーが手掛けるSF職場ドラマ『セヴェランス』です。

スパイスリラー『窓際のスパイ (Slow Horses)』も高く評価されており、最近ではセス・ローゲンがハリウッドを風刺した『The Studio』がエミー賞に多数ノミネートされました。

Appleが先導する形で、新たな高品質ドラマの時代が到来したようです。

地味ながらも便利なiCloud+の追加機能

最後はiCloud+。これはApple Oneのサービスの中でもっともシンプルで変化がないように思えるかもしれませんが、実はそうでもありません。

ストレージ容量は2020年から据え置きですが、1つ新しい要素が加わりました。それが「Apple Invites」です。

昔は対面イベントの企画をすべてFacebookで行っていましたが、他のプラットフォームに移行するにつれて、Partifulのような専用のパーティ計画アプリに切り替えました。

Apple Invitesはそれらに対するAppleの答えですが、奇妙なことに、招待状を作成するにはiCloud+に加入している必要があります。

これは少し残念な点ですが、Apple One加入者にとっては付加価値といえるでしょう。

結論:Apple Oneは誰にとって「買い」なのか?

Apple Oneがサービス開始以来、その価値を高めようと努力してきたことは事実です。しかし、その恩恵を誰もが平等に受けられるわけではありません。

あなたがApple Oneに支払う月額料金の価値があるかどうか、以下の3つの視点から見極めていきましょう。

視点1:利用サービスの「数」と「組み合わせ」

最も重要な判断基準です。もしあなたが、

  • Apple Music(月額1,080円)
  • Apple TV+(月額900円)

の両方を日常的に利用しているのであれば、個人プラン(月額1,200円)は既に検討の価値があります。ここにApple Arcade(月額900円)が加われば、個別に契約するよりも明らかにお得です。

視点2:あなたは「個人」か「家族」か?

この問いが、Apple Oneの価値を決定的に分けます。

もしあなたが複数人の家族を持つAppleユーザーなら、話は全く別です。ファミリープランやプレミアプランは、各サービスを個別に複数契約することに比べ、圧倒的なコストメリットを生み出します。

たとえば、一見プレミアプラン(月額3,780円)は高価に感じますが、各サービスを個別に契約した場合の合計金額(約6,760円)と比較すると、月に約3,000円、年間で36,000円もの節約に繋がります。

これは、家族という単位で見た場合、非常に合理的な「保険」と言えるでしょう。

視点3:「隠れた価値」をどう評価するか?

最後に、iCloudの追加ストレージ、Fitness+、News+といった「プラスアルファ」の価値をどう見るかです。

  • 写真やバックアップでiPhoneの容量が常に不足気味 → iCloud+の価値は高い
  • 自宅でのワークアウトに関心がある → Fitness+の価値は高い
  • 海外の雑誌やニュース、パズルゲームに魅力を感じる → News+の価値は高い

これらの「隠れた価値」に魅力を感じるほど、Apple One、特にプレミアプランはあなたにとって「単なる節約パック」を超えた、生活を豊かにする投資へと変わります。

個人の場合: 利用したいサービスが2つ以下なら、個別契約が賢明です。無理にバンドルに合わせる必要はありません。

家族の場合: 2人以上の家族が複数のAppleサービスを利用しているなら、ファミリープランまたはプレミアプランは「必須の検討項目」です。今すぐ、家族がどのサービスを使っているか確認してみましょう。

将来的にはFitness+やNews+をより柔軟に組み合わせられるプランが登場することに期待したいところですね。

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Source: 米国労働統計局, Mashable, Apple(1, 2, 3, 4, 5, 6, 7)