原発の新増設やリプレース(建て替え)は時代錯誤だ――。美浜原発(福井県美浜町)の敷地内での新増設や建て替えを巡り、関西電力は22日、地質調査を再開すると発表した。これに対して、地元などでは怒りの声も上がる。
国宝の三重塔で知られる明通寺(みょうつうじ)(福井県小浜市)の住職、中嶌(なかじま)哲演(てつえん)さん(83)は、関電の姿勢に憤りをあらわにした。
「原発にしがみつく強引さ、理不尽さには言葉を失う」
小浜市の出身。「原発設置反対小浜市民の会」の世話人代表を務め、半世紀以上も会の運動を続けてきた。
市内は、美浜原発で事故が起きた場合、状況によっては避難を迫られる原発30キロ圏内に含まれる。
「古くなった原発を強行的に稼働し続けているだけでなく、さらに新増設などに向けた調査とは、あきれて物も言えない。福島第1原発の事故の教訓を忘れたのか」
関電が調査の再開を発表したのは、参院選の投開票日から2日後というタイミングだった。関電の担当者は報道陣の取材に「一日も早く表明したいという思いがあった。(参院選後を)待った、ということは全くない」と答える。
それでも、中嶌さんは首をかしげる。
「選挙戦では原発の是非は争点にならず、この段階での発表は卑劣極まりない。ひとたび原発事故が起きれば、他の政策論争どころではないのに」
河本猛・美浜町議は「地元は原発に携わる仕事をしているなどしがらみもあって、反対でも声に出して言えない人がほとんど」と明かす。