ドローンの軍事利用が世界で急速に拡大する中、27日未明、九州電力の玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)の周辺に突如として緊張が走った。原発構内にドローン3機が侵入したという。原子力規制委員会はその後「ドローンと思われる光」と訂正したが、攻撃可能な機体が容易に原発建屋に近づける、警備上の脆弱(ぜいじゃく)性が浮き彫りになった。

 佐賀県の原子力安全対策課には26日午後10時20分ごろ、玄海原発側から電話で連絡が入った。担当職員や副知事ら6人が急きょ、情報収集に追われた。想定外の事態に、担当者は「県民が安心できるよう『対策を』と言い続けるしかない」と漏らした。

 原発は航空機によるテロ対策を想定しているものの、ドローン攻撃への対策は追いついていないのが現状だ。2013年7月に施行された原発の新規制基準は、01年の米同時多発テロを教訓に、航空機によるテロへの備えを求めている。衝突で施設が破壊されても炉心溶融を遠隔操作で防げるよう、特定重大事故等対処施設の設置が必要だ。

 一方、ドローン攻撃が世界的に注目されるようになったのは、近年になってからのこと。新規制基準ではドローンの侵入や攻撃は想定されていない。

 テロ対策に詳しい公共政策調査会の板橋功研究センター長によると、国内外の原発では国際原子力機関(IAEA)の勧告に基づき核物質の盗難や破壊への対策が施されているが、ドローン対策は最近の問題のため勧告に含まれておらず、国ごとに対応している。