節目の場所で、初めての賜杯まで手にした。

 大相撲名古屋場所で優勝を果たした平幕の琴勝峰(25)。今場所は4学年下の弟、琴栄峰が新入幕し、兄弟にとって初めての「同時幕内」の場所だった。幕内最高優勝という大輪の花を咲かせ、優勝インタビューでは「まだ感情が追いついていない」と控えめに喜びを語った。

 千葉県柏市出身で、小学校低学年の頃から市内の相撲クラブで相撲を始めた。弟もその後に続いた。

 師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇・琴ノ若)は、息子の大関・琴桜を同じクラブに入れていた縁で、琴勝峰・琴栄峰の兄弟を幼少期から見てきた。

 「兄は体が大きく『稽古(けいこ)、稽古』という感じだった。弟は体が小さいが、土俵の周りを走り回っていた。性格的には正反対かもしれない」。師匠は当時を振り返る。

 兄弟は、高校相撲の強豪・埼玉栄高に進んだ。琴勝峰は在学中の2017年の九州場所で初土俵を踏み、20年の7月場所で新入幕を果たした。琴栄峰も22年初場所で初土俵を踏んだ。

 今年5月の夏場所。幕内の琴勝峰は右太もものけがで初日から休場した。対して、琴栄峰は4場所目の十両で、入幕の可能性もある地位まで番付を上げ、序盤は4勝1敗の好スタートを切った。

 すると、琴勝峰は6日目からの出場を申し出た。全休なら十両落ちが確実だった。佐渡ケ嶽親方は「弟が勝ち始め、新入幕もあると思い、抜かれたくないと思ったのだろう」と話す。

 この場所で琴栄峰は、11勝して新入幕を決める。兄も負け越したが、出場した10日間で6勝を挙げて幕内に踏みとどまった。