タイ政府は24日、東北部の国境地帯で隣国カンボジアと武力衝突し、病院などがロケット弾で攻撃されて民間人を含む死傷者が出たと発表した。タイ政府によると、子供を含む民間人11人とタイ軍兵士1人の死亡が確認された。両国間では5月下旬から長年の国境紛争が再燃している。
タイ側は、カンボジア軍が先に攻撃してきたと主張する。タイ軍は、戦闘機でカンボジアの軍施設に反撃を加えたと明らかにした。
一方、カンボジアのフン・マネット首相は24日、「タイ軍が計画的かつ意図的に攻撃を開始した。侵略を強く非難する」と主張し、国連安全保障理事会の議長に緊急会合を開くよう要請したと発表した。
両国は800キロ超にわたって国境を接し、陸路での人の往来や貿易が盛んだった。しかし、一部未画定の国境を巡る紛争が長年くすぶり、2008年と11年にも武力衝突が起きた。
今回は5月下旬に偶発的な衝突でカンボジア兵1人が死亡したことを契機に、事態が急速に悪化した。7月に入り、国境地帯を巡回していた複数のタイ軍兵士が地雷で負傷する事案も起きた。
タイ軍は、この地雷が最近埋設されたものだとして相手側を非難したが、カンボジア国防省は23日に「根拠がない」と否定。タイ政府は23日、駐カンボジア大使の召還を決め、外交関係は冷え込んだ。
国境紛争に関連して、タイのペートンタン首相は1日、憲法裁判所から首相の職務停止を命じられている。親交が深いカンボジアのフン・セン前首相との電話協議の内容に倫理的な問題があったためという。【バンコク武内彩】