英国、フランス、ドイツの欧州主要3カ国の首脳は25日、飢餓などの人道危機が悪化するパレスチナ自治区ガザ地区の状況などを巡って電話で協議した。3首脳は共同声明で、イスラエルに対し、支援物資の流入制限の即時解除を要求した。一方で、マクロン仏大統領が24日に表明したパレスチナ国家承認への言及はなかった。早期の国家承認に消極的な英独首脳が応じなかったとみられる。

 ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が長期化し、民間人の犠牲者が増える中、英仏独はイスラエルへの連帯を示してきた立場を修正し、批判を強めている。ただ今回の協議で、和平実現の道筋を巡る溝も浮き彫りになった。

 マクロン氏は24日、9月の国連総会にあわせて、パレスチナ国家の承認を正式に発表すると言明。イスラエルと米国は強く反対した。

 スターマー英首相はマクロン氏から同調を求められている。だが、電話協議後の単独の声明では、パレスチナ国家の承認は、イスラエルとパレスチナの共存を目指す「2国家解決」に向けた「より広範な計画の一部でなければならない」と述べ、慎重な姿勢を堅持した。対米関係などに配慮しているためとみられる。

 独政府も25日、「短期的に国家承認する予定はない」との声明を出し、停戦を優先させる方針を強調した。

 ガザでは激しい戦闘が続き、食料や医薬品の不足も深刻化している。英BBC放送などによると、ガザの保健当局は25日、過去24時間に9人が餓死し、2023年10月の戦闘開始以降の餓死者は子供83人を含む122人に上っていると明らかにした。妊婦6万人以上を含む約60万人が栄養失調の状態だという。

 世界各地の100以上の人道支援団体は23日に共同声明を発表し、イスラエルによるガザ封鎖が「飢餓や死を生み出している」と非難している。

 英仏独首脳は25日の共同声明で、イスラエルに対し、国連や人道支援NGOが飢餓に対処するため早急に活動できるようにすることも要請。一方、ハマスについては、拘束している人質の即時かつ無条件の解放を求め、「ガザの将来においていかなる役割も果たすべきではない」とした。【ロンドン福永方人】