サブブランド戦略の新潮流

 近年、トヨタの「GR」や日産「AUTECH」、スバル「STI」など、メーカー公式のサブブランド車が存在感を強めている。

 これらは単なる特別仕様車やアクセサリー装着車とは異なる。モータースポーツ活動や独自のチューニング技術を背景に持ち、専用の足回りや内外装を備える。場合によっては専用エンジンや生産ラインを設けるなど、公式なカスタムカーとしての性格が色濃い。

 サブブランドの展開は、

・スポーティさ
・高級感

を前面に打ち出し、従来のブランドイメージでは届かなかったユーザー層を取り込む。ブランド価値の向上にも寄与している。

 加えて、サブブランド車は標準車より単価が高く、利益率の改善にもつながる。他社との差別化を図る手段としても有効であり、市場競争力を高める戦略的な武器といえる。サブブランドは、企業全体のブランド戦略を補完する重要な役割を担っている。

 ではなぜ今、自動車メーカー各社はサブブランド戦略に注力しているのか。その背景には、変化するユーザー心理と、メーカーによる緻密な市場戦略がある。本稿ではその実態を詳しく読み解いていく。

装飾されたパーツに加え極上の走りを実現した「レヴォーグ STI sports」(画像:STI)

サブブランドで変わる収益構造

 自動車メーカーがサブブランド戦略を強化する背景には、ユーザー心理とメーカーの戦略というふたつの側面が密接に絡み合っている。ユーザーは特別感や個性を重視し、サブブランド車に所有満足を求める傾向が強い。