EV脱炭素の盲点と課題
脱炭素実現に向けて、電気自動車(EV)化だけでは不十分との指摘が近年増えている。背景には、自動車製造にともなう素材由来のCO2排出がある。自動車1台には重量の約1割弱のプラスチックが使われており、大半は石油由来だ。走行時の排出をゼロにしても、製造段階の排出削減を行わなければ真の脱炭素とはいえない。
さらに、EVは車体が重くなるため、軽量化のために樹脂使用量が増加しやすい。また、バッテリー製造に大量のCO2が排出されるという逆説も存在する。
こうした課題を踏まえ、欧州の自動車メーカーはバイオ素材や再生プラスチックの導入で次世代EVの開発を進めている。例えば、BMWは2025年量産予定の「ノイエ・クラッセ」、ボルボ傘下のポールスターも製造段階から環境負荷軽減の構造改革に取り組む。
「燃料から素材へ」という視点の転換が、次世代モビリティ変革の重要な役割になるだろう。

次世代EVの素材革命戦略
脱ガソリン車の次に求められるのは、「脱石油素材」である。EV化により走行時のCO2排出は削減可能だが、自動車のライフサイクル全体のCO2排出の約半分は製造段階で発生しているとの試算もある。この主因はバッテリーの原料調達や製造にあるが、車体の軽量化を目的とした樹脂の多用も大きな要因だ。つまり、走行時のCO2をゼロに近づけるほど、製造段階での削減が不可欠というジレンマを抱えている。