世界で唯一原爆被害を経験した医科大を前身とする長崎大医学部の原爆復興80周年記念講演会(実行委主催)が14日、長崎市内であった。出席した関係者ら約130人は、壊滅的な被害から復興を遂げた学部の歩みを振り返り、核兵器廃絶の実現に向けて行動する決意を新たにした。
 医学部の前身で、現在の坂本キャンパス(同市)にあった旧長崎医科大(爆心地から500〜700メートル)では、原爆で学生・教職員計約900人が犠牲となった。1962年に原爆後障害医療研究所を設立し、被爆者医療や、国内外の原発事故の健康影響調査などに取り組む。2012年には学内に核兵器廃絶研究センターを設け、核軍縮関連の情報発信や政策提言をしている。
 永安武学長はあいさつで「世界では戦争が続き、核兵器の脅威が再び現実のものとなっている。被爆の実相を再認識し、核なき世界の実現に向けて具体的に行動していく」と述べた。
 被爆者医療に長年携わる朝長万左男・長崎大名誉教授(82)が基調講演。同大の白血病の疫学研究などを振り返りつつ、造血幹細胞に異常が生じる「骨髄異形成症候群(MDS)」や、多重がんを今なお引き起こす「核兵器の非人道性」を指摘した。未解決の課題として遺伝的影響や内部被ばくの実態解明などを挙げ「被爆者は放射線の健康影響から免れられず、被爆者医療に携わる者は気を緩めることはできない」と強調した。
 医歯薬3学部の学生約400人がオンラインで聴講。日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の田中熙巳代表委員(93)による特別講演などもあった。