【新華社銀川7月13日】フランス・パリで開かれている国連教育科学文化機関(ユネスコ)の第47回世界遺産委員会は11日、中国寧夏回族自治区銀川市にある西夏時代の王墓群「西夏陵」を世界遺産に登録することを決めた。中国の世界遺産は計60件となる。

 日本の西夏学者、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の荒川慎太郎教授は新華社のメール取材に対し、今回の決定に祝意を示すとともに、西夏陵と銀川は西夏研究の中心、象徴であり続けていると述べた。

 西夏は1038年に青蔵高原出身のタングート族が建国し、宋、遼、金と並立。都を興慶府(現在の銀川市)に置き、最盛期には河西回廊を支配した。

 荒川氏は、西夏文字や西夏言語学、西夏文献などの分野で多くの研究成果を発表し「西夏文金剛経の研究」「敦煌石窟西夏文題記銘文集成」「プリンストン大学図書館所蔵西夏文妙法蓮華経 写真版及びテキストの研究」などの著書がある。2011年には北方民族大学(銀川市)の武宇林(ぶ・うりん)教授と「日本蔵西夏文文献」を発表。中国さらには世界の西夏学界に大きな影響を与えた。

 荒川氏は西夏陵をこれまで十数回訪れている。最初は大学生だった1992年で、未舗装の道を車で揺られながら西夏陵に向かったことや、陵墓の周囲に柵がなく、草が生い茂っていたのが印象深かったという。直近では学会参加のために2023年8月に訪れ、大きな変化を感じた。最初と最後では30年以上の隔たりがあるが「西夏陵と銀川は西夏研究の中心、象徴であり続けている」と述べた。

 西夏陵からは、西夏文字が刻まれた大量の碑文の破片など、多種多様な文物が出土した。荒川氏は「それらは間違いなく希少で貴重な資料だ。語学・文字学などの視点からも西夏陵の重要性は言うまでもない」と指摘した。

 文字の不思議さ、奥深さから西夏研究を始めた荒川氏にとって、西夏文字は言語学や文献学を研究する上でも重要な要素であることに変わりはなく、近年は研究の重点を文字の字形や筆画に戻しているという。

 「中国には及ばないものの、日本にも歴史学、仏教学、西夏語学などに関心を持つ若手研究者はいる」。東京外大アジア・アフリカ言語文化研なども海外の研究者を招いて国際的な研究活動を続けていると紹介し「日本でも中国史に詳しい人なら西夏と聞いて西夏陵を思い浮かべる。西夏陵の世界遺産登録は日本で西夏文化を広めることにもつながる」と述べた。(記者/艾福梅、馬思嘉)