コネクテッドロボティクス(東京都小金井市、沢登哲也社長)は、ポテトサラダなどの総菜盛り付けロボットや、たこ焼きロボットの開発で名高い。どちらも相手が食品であるだけに、衛生管理や重量チェックには高い精度が要求される。一方で食品は春限定商品など季節や記念日ごとに商品が頻繁に変わるため、ロボシステムはその変化にも柔軟に対応する必要がある。高精度や多品種要求への対応をどうするか。AI(人工知能)活用がその有力な解になる。(編集委員・嶋田歩)

「総菜盛り付けロボットは最近、米国でも登場しているが重量精度は正直、いいかげん。日本では使い物にならない」。コネクテッドロボティクスでロボシステム開発を担う塚本光一執行役員は話す。国内スーパーやコンビニエンスストアの食品陳列を見れば、理由は一目瞭然だ。カップサラダや総菜コーナーでは重量70グラムなら70グラムの商品がきっちりと並べられ、誤差はせいぜい1グラム。弁当なら、からあげは4個、しば漬けは2切れなどと細かく決められ、梅干しは中央に配置される。

コネクテッドロボティクスは2017年のたこ焼きロボットを手始めに食器洗浄ロボットやそばゆでロボット、総菜盛り付けロボットや弁当のふた閉めロボットなどを相次いで開発してきた。たこ焼きの場合、数十個のたこ焼きを全て焼きムラなく、きれいに焼き上げなければならない。食器洗浄では送られてくる食器の種類の識別や、ロボットハンドで食器のどこを持てばきちんと洗えるかといった問題がある。ふた閉めロボットの場合、ふたを閉める場所にタレや汁が少しでも付着していると不合格になる。

マックスバリュ東海に納入したロボットシステムのAI画像認識画面

こうした品質や精度基準は納入先によって、それぞれ違う。納入先ごとにこうした場合はOK、こうした場合はNGというように合格、不合格の画像をAIに覚え込ませ、対応した。画像を覚え込ませるのに昔のAIだと1週間以上かかることもざらだったが、最近のAIでは数時間に短縮できたという。その分、システム開発も短期間でできる。

生成AIだとAI自身が可否を判断するので、こうした覚え込ませ学習は不要だ。今後は生成AIに置きかえた方が開発コストや期間で有利なようにも思えるが「ロボ製品の中に生成AIを搭載する考えはない」(塚本執行役員)という。コンビニサラダの盛り付けロボットなどで万一、エラーが発生した場合、記憶学習のAIなら原因がどこにあるかを分析し、対策が立てられる。しかし生成AIの場合、中身がブラックボックス化してしまうため「検証作業が不可能になる」(同)

ただ設計段階のツールでは、生成AIを積極利用する方針。「イクラ盛り付けロボットのように高価な食材を扱う場合、いちいち実物で試すわけにはいかない。生成AIならイクラの形状や大きさ、成分などを教えてやれば自分で推論するので材料が手元になくても開発できる」(同)。今後は重量や位置の精度以外に、彩りや見た目の美しさなどをAIにどう覚えさせるかが次の課題だ。