結婚式場運営のアルカディア(久留米市)は、2025年3月21日に福岡地裁久留米支部より破産手続き開始決定を受けた。ブライダル市場が縮小するさなかに見舞われたコロナ禍で売上高はピーク時の3割にまで減少。雇用調整助成金の不正受給が明らかになり、事態は急変した。

アルカディアは、製パン会社のホテル部門として産声を上げ、ブライダル事業への進出を経て分社化された。02年9月にオープンしたロイヤルパークアルカディア(久留米市)は、同地区初となる本格的なゲストハウスウエディングの式場として人気を博した。その後オープンした式場の評価も高く、17年8月期には売上高約47億円を計上した。

一方でブライダル市場は、19年の“令和婚”特需を除き、少子化、未婚率上昇、挙式や披露宴をしない“ナシ婚”で縮小傾向にある。そこに新型コロナが追い打ちとなった。三密回避から挙式や披露宴の延期やキャンセルが相次ぎ、21年同期の売上高は約13億円にとどまり、7億円の営業損失を余儀なくされた。同期以降、営業赤字は続き、現預金は22年同期の7億5千万円から倒産直前の24年同期には1億数千万円にまで減少した。

この間、窮地で頼みの綱となったのが新型コロナ対策の雇用調整助成金だ。休業など一時的な雇用調整によって、従業員の雇用を維持した場合に助成される。ところが、従業員の休業日数を水増しして雇調金を申請し、だまし取った疑いで今年2月に入り元社長や現職幹部ら5人が逮捕。「ブランドイメージの悪化に伴いキャンセルが発生」「来期の売り上げの目途(めど)が立たない状況」(破産申立書)となる。そして福岡労働局より助成金約10億円の返還と違約金約2億円の支払いを命じられ、事業継続を断念した。

倒産によって366組のカップルが債権者となった。1組当たり数十人を招待する場合、影響は1万人規模になる。式がキャンセルとなったカップルに対し、官民挙げた支援の手が差し伸べられたのは救いだ。(帝国データバンク情報統括部)