出産後の母親が発症する "産後うつ"。

自らも産後うつを経験した女性が、同じように苦しむ母親を救いたいと新たな挑戦を始めました。

◆“家事代行サービス”の利用で子どもとの時間を…

長崎市の山下 歩美さん。

今年4月に、3人目の子どもが生まれたばかりです。

育児に追われる中で、山下さんが依頼したのは、料理の作り置きなどの “家事代行サービス” です。

訪れたのは、長崎市の西 有希さん(36)。

保育士を経て、現在はベビーシッターとして活動しています。

(合同会社Nannyいっしょ 西 有希さん)

「よく眠れていますか?」

(3児の母 山下 歩美さん)

「ぼちぼちですね。まだ夜も子どもが起きるので」

用意したのは肉や野菜など3日分の食材。

(合同会社Nannyいっしょ 西 有希さん)

「10品は作りたいですね」

スタッフとともに、手際よく調理を進めます。

西さんが家事をしている間に、子どものおむつを替えたり寝かしつけたり、たっぷりの愛情を注ぎます。

(3児の母 山下 歩美さん)

「ご飯があるから (作る時間で)子どもと一緒に遊べる。時間を子どもに使えるのがありがたい」

◆「ギリギリで頑張るママたちを助けたい」自身も経験した "産後うつ"

西さんが目指すのは、一人ひとりに寄り添った支援。

今年、管理栄養士や保育士の仲間とともに、家事代行などを行う「合同会社Nannyいっしょ」を設立しました。

核家族化が進み、家族や親戚など身近な支援が受けられない人も増える中、西さんのもとに届く母親からのSOS。

会社には、昼夜を問わず予約が入ります。

(合同会社Nannyいっしょ 西 有希さん)

「ギリギリでママたち頑張っているんですけど。客観的にみるとすぐにでもサポートが必要だなって感じている」

西さんは新上五島町の出身。現在は9歳、6歳、4歳の3人の子どもがいます。

会社設立のきっかけは、2人目の出産後に経験した "産後うつ" でした。

(合同会社Nannyいっしょ 西 有希さん)

「(子どもが)泣き叫ぶ恐怖感。いつになったら泣き止むの?っていうのがすごく続いて。気づいた時は、ご飯ものどを通らないし。

涙も朝から止まらないし。下手したら、自殺しちゃうんじゃないかという感覚」

体重は10キロ以上減り、自殺を考えるほど苦しんだという西さん。

その時 手を差し伸べてくれたのは、地域の人たちでした。

(合同会社Nannyいっしょ 西 有希さん)

「近所の方々がごはんを届けてくれたり、長女の面倒を見てくれたり。自分の身内以外の他人が寄り添ってくれることが多くて。

長いスパンで考えずに、きょう1日を生きていこうって」

立ち上げた会社では、料理や掃除だけでなく子どもの世話やペットの預かりなど、幅広く依頼者の声に応えたいと活動しています。

会社が本格始動して2か月。一番の課題は “活動資金” です。

(合同会社Nannyいっしょ 西 有希さん)

「こんにちは」

訪れたのは、市内にある廃棄物の収集運搬を行う企業。

(合同会社Nannyいっしょ 西 有希さん)

「長崎市の乳児期 家事代行サービスが始まって。チラシの掲示をお願いできたら…」

(匠舞環境 熊 亜津美 社長)

「長崎の子どもたちが、笑顔があふれる毎日を過ごしてほしいという思い。私としてもありがたいと協賛させていただきました」

(合同会社Nannyいっしょ 西 有希さん)

「これからも続けていきたいと、さらにきょう思いました。ありがとうございます」。

(匠舞環境 熊 亜津美 社長)

「長男をひとり親で育ててきて、子育てから離れる時間がとても多くて。自分を責めることが多々あって、自分が自分を愛せなかったのが(協賛したい理由)」

西さんの思いが伝わり、年間契約で協賛してくれることになりました。

◆子育てをもっと楽しく 地域で支え合える仕組み作りを

3児の母、山下さんから依頼された “家事代行サービス”。

調理開始から約1時間半で、次々と料理が仕上がります。

チンジャオロースや鶏肉の煮物など、17品が完成しました。

(3児の母 山下 歩美さん)

「本当に助かりました、1人だとこんなにできないので。自分が作らないようなメニューがあって、子どもたちも喜ぶかなと思う。

なにより自分がすごく助かった」

子を持つお母さんたちにとって助けになるのは、料理はもちろんのこと…

(スタッフ)

「私は1人でいるのが辛かった。産後に…」

(3児の母 山下 歩美さん)

「結構 私は外に出てた。家に2人でいるって息が詰まってしまって…」

西さんたちとの何気ない会話も “貴重な息抜きの時間” です。

(3児の母 山下 歩美さん)

「(産後すぐは)大人としゃべることがなくなって、孤独感というか社会とつながってない感じがすごくあって。こんなにも自分の中で息抜きになるんだ。わかってくれる人がいるっていうのが救われる」

子育てをもっと楽しく、地域みんなで支え合える仕組みを作りたい。

西さんの夢は始まったばかりです。

(合同会社Nannyいっしょ 西 有希さん)

「一緒に子育てして、辛い時も苦しいときも一緒に笑って成長していこうねって思い。

長崎の子どもたちが、元気で豊かにすくすくと成長してほしい」

(寺田美穂アナウンサー)

“困っていなくても気軽に頼ってほしい” という西さんの言葉が印象的で、寄り添ってくれる存在が近くにいるだけで子育ての負担がやわらぐと感じました。

紹介した家事代行サービスは、長崎市内在住で1歳未満の子どもがいる家庭では長崎市の助成があり、2時間500円で利用できます。

そのほかの家庭でも利用は可能です。

また 西さんの会社では、活動に協力してくれるサポーターも募集しています。詳しくはホームページをご覧ください。

【NIB news every. 2025年6月18日放送より】