高校生が平和をテーマにした 1冊の絵本を作成しました。

小さな子どもでも「争いを起こさないためには?」と、いろんな視点で考えるきっかけを作ります。

この探究学習は「高校生MIRAI万博」で最優秀賞に輝き、7月31日に大阪・関西万博の会場でプレゼンテーションします。

◆絵本に込めた「どうすれば平和な世界になるのか」

絵本に登場するのは、となり同士の「怪獣たち」と「人間たち」。

(怪獣)

「もりにいる かぞくとなかまをまもるために、たたかおう」

(人間)

「よし!やっつけよう。もうこわくないぞ」

争いを描いたこの物語で問いかけるのは…。

“ どうすれば、平和な世界になるのか ”。

手がけたのは、県立長崎東高校の3年生の5人です。

社会課題の解決に取り組む「探究学習」の一環でグループを組み、5月に絵本を完成させました。

(高校での発表)

「子供のころに読んだ本は記憶に残りやすく、私たちに多くの学びを与えてくれる。その学びは、平和な世界を作る “根底” となる考えを育むと考えている」

探求学習でのテーマは、平和教育です。

◆本当に原爆が落とされないといけなかったのかを 考える

ロシアによるウクライナ侵攻など、世界情勢が不安定な中で、子どもたちに効果的にわかりやすく伝えたいと取り組みを始めました。

(制作メンバーのリーダー 鴨川 恵子さん)

「戦争が起こってしまった後の悲惨な状況の遺産をみると、“本当に原爆が落とされないといけなかったのか” を考える」

グループをまとめるリーダーを務めたのは、鴨川 恵子さんです。

(リーダー 鴨川 恵子さん)

「1年間くらい制作してきたので、まずは完成してほっとしている。いろんな方にほめてもらうことが多くて、効果があるんだと頑張ってきた甲斐ある」

◆それぞれの目線で描き “解決策” を考えるよう導く工夫

絵本の主人公は「怪獣」と「人間」。

それぞれが水を巡って争うストーリーです。

作り方には、ある “工夫” が…。

一冊の本に表裏がなく、どちらも表紙なのです。

(リーダー 鴨川 恵子さん)

「(前後ろ)どちらからも読めるようになっていて、怪獣側と人間側の両者の視点で物語を読み進められて。

最後に迎える結末は同じで、起こってしまった戦争に対して『君ならどうする』と、問いかけて終わる」

人間たちにとって水はとても大切なもので、町にはたった1つしか井戸はありませんでした。

(人間)

「怪獣が来たぞ!」

(人間)

「大変だ!明日の分の水がなくなっちゃったよ。どうしよう」

子どもの怪獣は、泣きながら話し始めました。

(怪獣)

「のどが渇いたからお水を飲んでいたら、人間さんがいっぱい来て、攻撃されて怖くて逃げてきたの」

(怪獣)

「まあ、私の子どもになんてひどいことを!今すぐやり返しましょう!」

争いをそれぞれの目線で描き、解決策を考えるよう導くことで、多面的に物事をとらえる力を養う狙いがあります。

◆メンバー5人の役割とこだわり

制作に取り掛かったのは、去年5月頃。

(制作メンバー 植坂 日和さん)

「個々の意見が結構あったけれど、それを一つにするのが難しかった」

ストーリー構成やキャラクターデザインについても、何度も何度も、話し合いました。

(ストーリー担当 小山 翠さん)

「小さい子どもたちにわかるような表現を使わないといけない。

“攻撃” という言葉をあまり使いたくなくて、“やり返す” にした」

(デザイン担当 藤原 美結さん)

「絵本に登場させることができるキャラクターを、自分で書くというのがすごく楽しかったし、やりがいがあった」

東京大学や国連大学などの研究者から、テーマ決めや構成ついてのアドバイスをもらうなど、約1年かけて完成しました。

『世界の子どもたちに読んでほしい』と、“英訳” もしています。

(鳥居 正洋 教諭)

「リハーサルは、全員読んだ?」

サポートしてきた鳥居 正洋 教諭は、生徒たちの自発的な意欲に驚かされているといいます。

(鳥居 正洋 教諭)

「特に探求学習は、大人と関わる機会がすごく多い。なかなか背伸びしないと難しいところもあるが、一生懸命 話したことを繰り返しながら成長していった」

印刷などの費用は、クラウドファンディングを活用しました。

(リーダー 鴨川 恵子さん)

「どうやったら(寄付したいと)興味を持ってもらえるのだろう。すごく考えて構成を練った」

目標金額は24万円でしたが、わずか3日で30万円あまりが集まったそうです。

◆絵本を子どもたちに… 反応は?

この日、メンバーが訪れたのは、長崎市の認定こども園です。

(リーダー 鴨川 恵子さん)

「私たちが作った絵本を、実際に子どもたちに読み聞かせて、感想を聞きたいと思って来ました」

読み聞かせを始める 30分前。

(打合せ)

「できるだけこっちを向く意識がいい。(端にいる園児からも)下まで見える?」

絵本を見せる角度や、手持ちする位置などを入念に確認してます。

そして、集まった園児たちの前で披露します。

(人間役)

「怪獣たちを全部やっつけてしまおう。そうすれば安心だ。水をとりにいける」

(怪獣役)

「のどが渇いたからお水を飲んでいたら、人間さんがいっぱい来て攻撃されて、怖くて逃げてきたの」

園児と小学生40人あまりに読み聞かせを行ったあと、人間と怪獣が争わないためには、何ができたか?。

子どもたちと一緒に考えました。

(制作メンバー 橋口 由望さん)

「戦いが始まらないために、どうすればよかったのか話してみてください」

(園児)

「怪獣と人間が、仲間になればよかった」

(制作メンバー 橋口 由望さん)

「仲間になればよかった。そうだよね」

(リーダー 鴨川 恵子さん)

「正直、不安なところも多かったけど、思ったよりも意見を出してくれて、楽しく平和について考えてもらえたのではないか。本当にやってよかった」

◆大阪・関西万博の会場でプレゼンへ

鴨川さんたちはこの夏、大きな舞台に臨みます。

(発表の練習)

「私たちはまず、従来の平和教育の見直しから始めました」

高校生が探究学習の成果を発表する「高校生MIRAI万博」。

全国から集まった300以上のチームから、6チームしか選ばれない最優秀賞に輝き、7月31日に大阪・関西万博の会場でプレゼンテーションします。

(リーダー 鴨川 恵子さん)

「私たちが作った絵本を読むことで、家族や友だちと “どうすればよかった?” という話をして、気軽に日常的に平和を考えるきっかけになってほしい」

「平和とは何か」。

高校生たちは絵本を通して、国内や世界の子どもたちが考えてくれることを願っています。

絵本は、県内25の図書館と長崎市内31の学童に寄贈されています。

また今後、国連本部のホームページへの掲載を依頼するということです。

【NIB news every. 2025年7月8日放送より】