―[すこしドラマになってくれ〜いつだってアウェイな東京の歩き方]―


ただ東京で生まれたというだけで何かを期待されるか、どこかを軽蔑されてきた気がする――そんな小説家カツセマサヒコが“アウェイな東京”に馴染むべくさまざまな店を訪ねては狼狽える冒険エッセイ。今回ふらっと立ち寄ったのは南千住駅にある『オンリー』という喫茶店。佇まいも自分好みの店内でコーヒーを飲んでいると、素敵な出会いが訪れた。

願いは今日も「すこしドラマになってくれ」

◆仕事のための読書【南千住駅・オンリー(喫茶店)】vol.6

自分で買った本ばかり読んで、出版社から送られてくる本は読む気がしない。そういう日がのんべんだらりと続いていた。

「読みたい本」と「読むべき本」は、同じ本でもまるで性質が違う。読み心地以前の、「読む」という行為に向かう気力、みたいなものが違う。

それでも出版社からは、無慈悲に本が送られてくる。書評や文庫解説といった、仕事に直結する本もあれば、新しく書こうと思っている小説の資料のための本も届いた。さらには、ただなんとなくあなたにお薦めの新刊だからと勝手に送られてくるものもあった。

本が届くなど、どれほど贅沢なことか、と昔は感じていたはずで、今もその気持ちが潰えたわけではない。むしろ、有難いと思うからこそ、やすやすと送ってくれるなよ、と思う。欲しくても買えない一冊と思っている人の気持ちを、踏みにじるなよ、と思う。