1960年(昭35)9月20日に東京・銀座に開館した映画館「丸の内TOEI」が、本社ビル・東映会館の再開発と本社移転を受けて27日に閉館し、65年の歴史に幕を下ろす。その歴史を振り返りながら、「丸の内TOEI閉館 過去、現在…東映の未来」と題し、3回連載する。1回目は、吉村文雄社長(60)に、跡地に建設する商業施設に映画館を設置しない経営判断と、その先に描く東映の未来について聞いた。【村上幸将】
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吉村社長は開口一番「老朽化して物理的に使えないにしても、歴史を象徴する建物。私の代で…先人に申し訳ない」と口にした。その上で「65年もここにあり、東映と言えば銀座。寂しい」と、一社員としての率直な思いも吐露した。
業界人はもちろん、映画ファンの間からも「丸の内TOEIがなくなった後、東映はどうするんだろう?」との声が聞こえてくる。昨年5月15日に、東映会館の再開発と本社移転を発表した際、跡地にホテル・店舗を中心とした商業施設を建設するとした。すると「跡地で映画館はやらないのか?」という声が各所でささやかれた。その点を直撃すると、吉村社長は「映画館の設置も考えなかったわけではない」とした上で、次の3点を理由に挙げた。
<1>330坪(約1089平方メートル)しかなく、シネコンを設置しても複数階に分けないと造れない上、狭い。
<2>13スクリーン、約2800席を有するTOHOシネマズ日比谷が至近にあり、番組編成が難しい。