【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】
以前、「ポリファーマシー」について取り上げました。ポリファーマシーとは、クスリを多く(5〜6種類以上)使用していて、それによる副作用や相互作用といった有害事象が認められる状態をいいます。こういった状態になってしまう原因にはさまざまなものがありますが、多くの場合で「潜在的に不適切な処方」(Potentially Inappropriate Medications=PIMs)が含まれているといわれています。今回は、このPIMsについてお話しします。
使っているクスリが多くなると、当然、副作用や相互作用のリスクが上昇します。その中に本来必要のないクスリが含まれていたとすると、それは「百害あって一利なし」になってしまいます。そのため、近年はPIMsが注目されていて、PIMsが含まれている患者を抽出するためのスクリーニングツールや、特に高齢者にとって不利益が生じるリスクのあるクスリのリストなどが複数公開され、実際に利用されています。つまり、PIMsが含まれている患者を早期に発見して適切な介入を行うことで、最終的にはポリファーマシーの予防につなげようとしているわけです。
なぜPIMsが発生してしまうのかというと、そこにもさまざまな要因がありますが、クスリを処方される側、つまり患者側に問題があるケースもあります。高齢になると複数の疾患があり、それらに伴う不具合や症状が生じている場合もあります。そういった際、それぞれの症状に応じて複数の医療機関を受診している方もいらっしゃいます。例えば、血圧についてはA病院、関節痛についてはB病院、めまいについてはC病院……といった感じです。そして、それぞれの医療機関からクスリが処方されます。